イチロヲ

ノーライフキングのイチロヲのレビュー・感想・評価

ノーライフキング(1989年製作の映画)
3.5
ゲームの呪いが現実世界に侵食していることを察知した子供たちが、虚実が錯綜する情報網を駆使しながら、ゲーム攻略を目指していく。いとうせいこうの同名小説を映像化している、ヒューマン・ドラマ。筆者は原作を読了済み。

子供たちの噂話の波及力と物事に因果関係を作ろうとする人間心理をモチーフにしながら、ゲームとリアルの狭間に陥った少年の焦燥をスケッチしていく。少年の自己実現を強調させたアレンジが施されている。

惜しむらくは、原作に含まれていた「先見性」が希薄になっているところ。ゲームのロールプレイがリアルのロールプレイ(=大人の世界)に干渉していく過程、終わりのないゲームに取り組み続ける「新人類の出現」など、推量すべきポイントが端折られている。

今現在、大人になったファミコン世代は、ネット上の雑多な情報をもとにして、一喜一憂を繰り返している。笑う人、怒る人、他人を攻撃する人。誰しもが終わりなきゲームのプレイヤーであることを、痛感させられる。
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