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ノーライフキングのhorahukiのレビュー・感想・評価

ノーライフキング(1989年製作の映画)
3.5
ツマンナイ校長の話で
校長自身がブッ倒れる衝撃!

U-NEXTにノスタルジーを感じさせるモダンホラーって感じで紹介されてたから見たのだけど、あんまりホラー成分は感じ取れなかった…。そういうところでは残念なんだけど、なかなか良い雰囲気あって良かった。

発売初日に3700人の列ができるほどの人気テレビゲーム「ライフキング4」に熱中する小学生の子どもたちが主人公。そのソフトの中には「ノーライフキング」と呼ばれる呪いのソフトが紛れ込んでいて、それをプレイしたら死ぬという噂話が…。クリアすることで呪いを解くことができるという噂を信じ、主人公たちが攻略に乗り出すという内容。

設定的に凄くわかりやすい展開のお話かと思いきや、かなり抽象的でゆっくりとした流れの中進んでいくのでビックリ。嘘か本当なんかよくわからんゲームの攻略法だったり裏技だったりを真剣に話し合う姿だったり、終業式の国旗掲揚だったり、夏休みの水泳だったり、特定のCMを1日4回見たら死ぬみたいな噂話がものすごい数行き交ってたり、なんかもう色々となつい!本筋とは関係なく体育館でやってるゲームってスーパーマリオランドだよね?私もやってたわ…。あと噂の中に『サスペリア』のタクシー内シーンの話あったよね(笑)

子ども特有の死への興味と恐れの双方が入り混じった感情がところどころに渦巻いていて、それが噂話として表に出ることで子どもという集団における独自言語として存在が大きくなり、力を持ち始める。それは、発した人の手を離れ、不確かなんだけど実在性のある「怪物」となる。

一定の集団だけでの共通言語となった「怪物」は価値観を形成し、更には「現実」となる。その「現実」となった「怪物」は主人公の「現実」を蝕み、バーチャルとリアルの境目がなくなっていく。街中に現れ出す言葉とか、送られてくるゲームソフトとか、進路面談での先生との会話とか、暗い部屋で一人没頭する際の光の当たり方や目の鋭さとか、迫ってくる重圧がとてつもなく、ホラーといっても良いような怖くて巧みな表現の数々が面白かった。

このテーマをこの時代に扱ったってのが先見の明ありすぎて怖くなるし、本作から30年経ってる今だからこそ刺さるものでもあるわけで、原作がもっと前だってこと考えるとマジ凄い。ホラーかどうか微妙なとこだけど、期待を背負った彼の姿は狂気にも似た気迫があって素直に怖かったし、「怪物」の存在はホラーだと言っても言い過ぎじゃないんだろうね。何より見ていて苦しかった。
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