かずぽん

ヤング・フランケンシュタインのかずぽんのレビュー・感想・評価

4.2
【個性的な名優たちによるパロディ】

監督:メル・ブルックス(1974年・米・106分・モノクロ)
脚本:メル・ブルックス/ジーン・ワイルダー

トランシルヴァニアのフランケンシュタイン家では、ヴィクター・フランケンシュタインがモンスターを造り出したことを一家の恥と思っており、ヴィクターの父ビューフォートは息子に遺産を残さず、自分の死から100年後に開封せよという遺言書を遺しました。そして100年後、遺言により曾孫のフレデリックが遺産を相続することになったのです。(特典参照。カットされた映像で、その経緯が詳しく語られています。)

フレデリック(ジーン・ワイルダー)は、ボルティモアの医大の有名な脳外科医ですが、フランケンシュタイン(Frankenstein)と呼ばれることを嫌って、自身はフロンコンスティン(英語読み)と名乗っています。
曾祖父の遺言が開示されたことにより、フレデリックはトランシルバニアのフランケンシュタイン城に呼ばれて行きます。
此処から本作の面白さが炸裂!
『フランケンシュタイン(1931)』『フランケンシュタインの花嫁(1935)』をご覧になったことのある方には、本作がそれらのパロディなのが分ると思います。未見の方は、過去作を観たくなるかも知れません。

何といっても印象的なのが、ジーン・ワイルダー扮するフレデリックの目で、アイラインで強調されており、ヘアスタイルはアインシュタイン風。
彼のフィアンセ、エリザベスを演じるマデリーン・カーンの演技は、何て表現したらよいのやら… 駅のホームで恋人・フレデリックと別れを惜しむシーンでは、彼をおおいに焦らします。
そして、フレデリックをトランシルヴァニア駅まで迎えに来たアイゴール(マーティ・フェルドマン)が、登場早々に存在感を示します。こぼれ落ちそうな大きな目が表情豊かで、彼のやる事なす事が可笑しい。
老家政婦のブルッハー(クロリス・リーチマン)は、かつてヴィクターの恋人でもあったらしく、未だにヴィクターを慕っているようで彼の肖像画にキスしていました。彼女の肩の動かし具合など、演技は生真面目なのに独特の可笑しみがあります。彼女の“ブルッハー”という名前を聞くと馬が騒ぐのですが、後半のシーンになってもこれが続くので思わず笑ってしまいます。
フレデリックの助手のインガ(テリー・ガー)は、個性的な登場人物の中にあってはとても清純に見えます。それでいて、本作のお色気担当。可愛いです。

あんなに祖父のヴィクターを一家の恥と考えていたフレデリックですが、ヴィクターがモンスターを造った時の記録を見つけると、科学者の性(さが)なのか、死体を甦らせる実験を再現してしまいます。
フレデリックとアイゴールが墓を掘り返しに行くシーン、盗んできた脳が手違いでabnormalな脳だったとか(アイゴールの言い訳が「アビィ・ノーマル」という人物の脳だと思った。)、誕生したモンスターは火が怖い等々、終始笑いがありました。オリジナルと違うのは、モンスターを生み出したフレデリックが最後までモンスターを愛していることでしょうか。

モンスターが城を飛び出して、盲目の老人の小屋に辿り着くシーン。オリジナルでモンスターが唯一心を通わせた老人とのシーンですが、この老人を演じているのがジーン・ハックマンだったらしいです。まったく気づきませんでした。
書き忘れるところでしたが、モンスターを演じたのはピーター・ボイル。大柄で不気味なモンスターが、シルクハットに燕尾服で、フレデリックと共に舞台上で『踊るリッツの夜』を披露するのですが、ほとんど唸り声でした。この舞台の最後など、私は「キングコング」を思い出してしまい、モンスターの悲哀という共通点を感じたのでした。

木製の義手を付けたケンプ警部(ケネス・マース)のインパクトは最強でした。この義手をどう動かすのか注目して楽しんで下さい。

メル・ブルックスとジーン・ワイルダーによる脚本の巧みさも然ることながら、演技達者たちの共演が相乗効果を生み惹き込まれました。
ラストでもう一度、実験のシーンがあります。フレデリックとモンスターの脳を半分ずつ分け合うのですが、成功した実験の結果は・・・

想像するだけでニヤニヤしちゃいます。(笑)
かずぽん

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