Eike

ダークナイト ライジングのEikeのレビュー・感想・評価

ダークナイト ライジング(2012年製作の映画)
4.0
端的に言ってインパクトと完成度は「ダークナイト」の方が上。
しかしエンターティメントとしてのカタルシスは本作「ダークナイト・ライジング」に軍配が上がる。
実際、クライマックスに掛けてはシリーズ中最高のスペクタクル&アクションが用意され、結果的に些細な不満は解消されてしまいます。

「ダークナイト」の完成度を考えるとこの最終作に対しては期待より不安の方が大きかったです。
しかし導入部からの小一時間の序盤、状況説明と登場人物のスタンスの提示が実にスムーズ。
さすがにこの部分はシリーズとしての蓄積と実力のある演技者を揃えた布陣の勝利。
特にブルースと”執事”アルフレッドの対峙シーンはノーラン作品の重鎮M・ケインの包容力のある演技が非常に効いており、シリーズ前2作との結びつきが提示されて一気に物語にエモーションが息づいた気がします。

実は本作でバットマンがスクリーンにその姿を表すまでに50分近くかかっていて下手するとただ退屈な状況説明になりかねないところ。
ところがこの前振り部分をきっちりと見応えある人間ドラマとして提示できるのがノーラン監督の実力(この辺りはやはり英国人気質でしょうか)。

前作ダークナイトが衝撃的だったのはもはやバットマンもジョーカーもハーヴェイ・デントも都市のカオスが生み出す物語の駒に過ぎないとはっきりと見せつけた点。
バットマンの存在自体がジョーカーに象徴される人の邪悪な面を引き寄せてしまう皮肉さ。
正義も悪も全て人間社会、その混沌が産み落とす副産物であるかのような展開はすなわち我々の現実社会そのものであり、もはや子供だましのマンガ映画の枠には到底収まらないものでした。

しかし今回の第三弾は「完結編」であり、その意味で全てはブルース・ウェイン、そしてバットマンの物語として収束させなければエンタティメントとしては失格。
ただ、だからといってバットマンの活躍場面を増量すればいいという風には持って行かなかったのはさすがに賢明でした。
今回の宿敵ベインに加えてアン・ハサウェイ扮するキャット・ウーマン、さらにはジョゼフ・ゴードン・レビッド演じる若い刑事、そして重要な役割を与えられながらこれまで焦点が当たってこなかったゲイリー・オールドマン扮するゴードン本部長にも見せ場を用意して周到な幕引きを図る脚本。
さすがに3時間近い上映時間にまで膨らんではいるがそれでも各キャラクターのエピソードを織り込みながらブルース・ウェイン=バットマンの挫折から復活へのお膳立てに組み込んでゆく辺りの映画的快感も大きい。

結果としてワリを喰っているのは実はトム・ハーディ扮するベインだったりするのだが、あのごつい肉体の存在感のおかげで意外と印象は小さくなっていない。
物語後半のツイスト部分に関しては賛否あるとは思いますが全ては物語にケリをつけるためのお膳立てと考えれば腹も立ちませんでした。
そして終幕。
見る側の予想を微妙に外しつつも新たな伝説の誕生を強く予感させるあのラストを私は存分に堪能いたしました。
あ〜お腹いっぱい。

もちろんバットマンというキャクラタに関しては本作以降も継続してスクリーンに登場しておりますが、このノーラン版が実質デファクトスタンダードになってしまった印象がありますね。
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