櫻イミト

獣人タイガの櫻イミトのレビュー・感想・評価

獣人タイガ(1929年製作の映画)
4.0
「魔人ドラキュラ」(1931)「フリークス」(1932)のトッド・ブラウニング監督と名優ロン・チェイニーの同志タッグによる傑作カルト映画。

東南アジア・メコン川ほとり、フランス領で中国の習慣が残る村。虎狩り名人タイガ・ヘインズ(ロン・チェイニー)は野獣を捕獲してサーカスに売るのが仕事。顔が傷だらけの強面だが娘トヨ(※東洋)を溺愛する良い父親だった。それがある日、トヨから取り引き先の息子ボビーと恋仲であることを打ち明けられる。最初は不満を示したタイガだったが、ボビーがトヨを守ろうと虎に立ち向かう姿を見て二人を認めるのだった。そして数日後、タイガとボビーは船で取引き先に向かうことに。船中でボビーは妖艶な女、デ・シルヴァ(エステル・テイラー)と出会う。すっかりボビーを気に入ったシルヴァは誘惑をかけ恋の虜にさせる・・・。その姿を見たタイガは驚き、シルヴァを罵りボビーをなぐりつけた。実はシルヴァはかつて蒸発したタイガーの妻、トヨの母親だったのだ。。。

ブラウニング監督×ロン・チェイニーの映画に外れなし。本作も非常に面白かった。虎と対決し大きな像に乗って登場するチェイニー。頑固だが娘に甘い好人物タイガを生き生きと演じている。オリエンタル感たっぷりの美術演出もムード満点なのはブラウニング監督ならでは。それに拍車をかけるのが悪女を演じたエステル・テイラー(「十誡」など)の存在感で、そのエキゾチックなルックスは魔性の女として説得力十分だった。ブラウニング×チェイニー作品特有の“不遇者の哀しみ”は強く打ち出されてはいないものの、見世物的エンターテイメントの土俵で人情メロドラマが繰り広げられ、落としどころで二人の刻印を魅せてくれた。

これが本作レビューの一番のり。誇らしくもあるが観られていないのが残念でもある。ブラウニング監督×ロン・チェイニー作品の再評価、および日本語版DVD化を切に願う。
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