こたつむり

潮風のいたずらのこたつむりのレビュー・感想・評価

潮風のいたずら(1987年製作の映画)
3.8
♪ 強い気持ち 強い愛 心をギュッとつなぐ
  幾つの悲しみも残らず捧げあう
  今のこの気持ちほんとだよね

これはヒドイ。
今の世の中では作れないレベル。
雑で粗っぽくて、モラル的にも微妙で、ツッコミどころが満載。80年代特有の音楽を前面に出す演出も活きているとは言えず…駄作の雰囲気が漂っています。

が。が。ががががが。
なぜか心が動かされるんですよ。
先の展開が読めるのに。それが強引だと分かるのに。気付けば涙腺崩壊直前。何故だ何故だ何故だ。何故に、こんな大雑把な作品が良いんだ。

そう。感情を動かすのは理屈じゃなく感情。
主演の二人(カート・ラッセルとゴールディ・ホーン)の絶妙な距離感にリアリティがあるので、粗っぽい展開でもググっと惹き込まれるんです。

後から知りましたが、二人は本物の夫婦だとか。
だから“手慣れた感じ”なんですね。やっぱり、夫婦の間のことは夫婦にしか分かりません。「阿吽」の呼吸があるんでしょうね。

ただ、それにしても。
イマドキの価値観で言えば、結構ギリギリです。彼女(ゴールディ・ホーン)の“高慢ちきさ”は物語上仕方ない布石ですが、それに相対する彼(カート・ラッセル)の態度は…うーん。

正直なところ。
彼女は前夫も含めて“男を見る目がない”のでは…?なんてお節介な思いを抱いてしまったのですが…まあ、他人の恋路に物申す奴は馬に蹴られて何とか、ですからね。口にはチャック。それが大人の嗜みです。

だけど、もう少しだけ言うならば。
人間は環境に慣れてしまう動物なんでしょうね。記憶を失った彼女が「私はチビでデブでふしだらだったんだ…」と言い聞かしていた場面は胸が苦しくなりました。

まあ、そんなわけで。
80年代の価値観で作られた恋愛コメディ。
どうしても現代の視点で捉えちゃうので“ヤヴァさ”が際立ちますが、昔は色々と鷹揚だったんだなあ、と心を広くするが吉。クライマックスでは泣いちゃうかも、です。
こたつむり

こたつむり