イペー

ハンガーのイペーのレビュー・感想・評価

ハンガー(1983年製作の映画)
3.6
美し過ぎる吸血鬼!美し過ぎる黒歴史!

現代のNYを舞台に、永遠の若さを巡る吸血鬼たちの愛憎を描く、モダンゴシックなホラー。

トニー・スコット監督といえば、細かいカット割りや、スピーディなアクションが代名詞だと思うんですが、本作は監督の長編デビュー作でありながら、そんなトニスコ風味は皆無。
興行的にも大失敗しているようです。

とはいえ監督の志向は本来であれば、この映画が持つダークな世界観にあったのかもしれない。かなり気合いの入った作品でした。

美意識が隅々まで張り詰めてます。緻密な画面構成と、感覚に訴えるカットの連続。細かい効果音を含め、サウンドデザインまでこだわり抜いている。

徹底された映像表現がデカダンで耽美的なムードを実現。さらにカトリーヌ・ドヌーヴ、デヴィッド・ボウイが美しい吸血鬼のミリアムとジョンを演じてます。ハマり過ぎ!

ストーリーを楽しむ作品ではありません。永遠の愛、永遠の若さ、なんてものはマボロシだよ、という寓話がスローなテンポで語られ、ドラマチックな展開もなし。

感覚的に合うか合わないかは大きい。けれども美的センスが疑わしい自分でさえ、息を呑む様な美しいシーンが沢山ありました。

ハラハラドキドキのトニスコ節は無くとも、劇中でミリアムとジョンが過ごす様な、"美しい退屈"を感じる事が出来るのではないでしょうか。

…無理してキレイにまとめようとし過ぎたせいか頭痛がしてきた…。終わります…。
イペー

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