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ハンガーのtakのレビュー・感想・評価

ハンガー(1983年製作の映画)
3.4
ミリアムは不老不死の吸血鬼。それぞれの時代に気に入った相手を見つけては、長く続く命を授けて恋人にしていた。現在の相手はイギリス人の美男子ジョン。ミリアムから授けられた命が若い姿を維持できるものだと信じていたジョンは、老化を感じ始めていた。そこに美しい医師サラが現れる。彼女は老化現象を研究しており、世間でも注目され始めていた。サラに興味を示すミリアム、嫉妬と急速な老化で焦りを感じるジョンは、サラの病院を訪れる。

「トップガン」など数々の大ヒット作で知られるトニー・スコット監督のデビュー作である。派手な作品のイメージとは違う作風に驚く。淡々としているのに緊張感が途切れない独特のムード、暗い部屋に差し込む光。映像に映し出される陰影の印象は、兄リドリー・スコット監督作を思わせる。ヨーロッパ資本の映画だし、他の監督作の明るいイメージとは全く違う。トニー・スコット監督の原点、兄リドリーの影響を感じさせる作品として興味深い。

その一方でロックバンドのパフォーマンスや、吸血鬼に魅入られた者たちの末路を描く特撮には、後のトニー・スコットらしい80年代的な派手さも見える。オープニングで流れるのはBela Lugosi is Dead。ドラキュラ俳優で知られるベラ・ルゴシの死を歌う曲を選曲するなんて、ちょっと意味深ではないか。

カトリーヌ・ドヌーブ、デビッド・ボウイ、スーザン・サランドンという美男美女の三角関係は最大の見どころ。スーザン・サランドンとドヌーブのベッドシーンがとにかく美しい。老化現象を気にし始めたボウイは、家を訪れる女性に毎回ポラロイド写真を撮ってもらう。その老化進行の速さ。身体が朽ちても意識は死ねない苦しさが観ていて辛い。一室に並んだ棺にゾッとする。

不老不死であるミリアムの孤独がそれぞれの時代にパートナーを求めた。そんな愛の映画と言う一面もある。しかし、80年代らしい特殊メイクによるビジュアル重視のホラー演出が強く印象に残り、そんな味わいは後半吹っ飛んでしまうのはちと残念。
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