エソラゴト

脳内ニューヨークのエソラゴトのレビュー・感想・評価

脳内ニューヨーク(2008年製作の映画)
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死の間際で走馬灯のように自分の人生を振り返っているかのような作品。

その所為なのか主人公ケイデンとその他の登場人物達との流れる時間がかけ離れていたり、彼が好意を寄せる女性の人相が酷似していたり(ここにもしキャリー・マリガンが加わっていたら益々混乱笑)、意味不明・理解不能なシーン(火事の家、テレビの画面、エロい精神科医etc)が所々に挿入されていたり…やはり一筋縄ではいかないザ・カウフマンワールドなのは間違いなかった。

ここまでいくつか彼の作品に触れてきたが、何故こんなにも初見ではとっつき難い謂わば面倒臭い作品に自分は惹きつけられるのだろうか?

彼自身の投影である主人公達のジメジメとした後ろ向きな性格や社交性の無さ、大人になりきれない幼児性など(あとは女性のタイプも!?)に強烈なシンパシーと愛おしさを感じるからなのか…。

そして同時にチクチクギスギスとちょっとづつ少しづつ傷口をえぐってくる「頼むからもうやめてくれー」といった近親憎悪にも似た感情があるからなのかもしれない。

映画のタイプも古今東西いくつかあるが、初見で面白さがすぐ分かる直感的な作品は言わずもがな、2度3度何度も観る事で理解が深まる作品、そして観る度に捉え方が変化する作品、自身の人生経験・体験が色濃く反映されている作品。カウフマン作品はその後者3つを内包しているから癖になるのかもしれない。

初監督作品にして人生の集大成的な壮大な作品を創ってしまってこの先彼は大丈夫?似たテーマながら全く異なったアプローチで作り上げた次作『アノマリサ』で自分の余計で勝手な心配であることは証明された。