ウシュアイア

ヒマラヤ 運命の山のウシュアイアのレビュー・感想・評価

ヒマラヤ 運命の山(2009年製作の映画)
3.4
<山岳映画特集②>
[あらすじ]
厳格な教師の家に生まれ育った仲のいいラインホルトとギュンターのメスナー兄弟は、登山界で名を知られるようになり、ついに念願のナンガ・パルバート・ルパール壁初登頂を目指す遠征隊に参加することになる。遠征隊のリーダー・カール医師は、メスナー兄弟と、彼に対抗心を燃やすオーストリア軍隊出身のフェリックス・クーエンを競わせて初登頂を目指させる。ラインホルトとギュンターは苦難を乗り越え、ルパール壁初登攀に成功する。ところが・・・

ドイツの実話ベースの山岳映画ということで、何と言っても『アイガー北壁』を思い出さずにはいられない。前にも同じような作品を観た気がする、というか完全に二番煎じの気が・・・しかも、アイガーならばマッターホルンやモンブラン、モンテローザと並ぶアルプスの名峰に数えられる山で多少馴染みがあるが、ナンガ・パルバットと言われてもピンとこない人も多いのではなかろうか。

それもそのはず。ヒマラヤ山系といっても、ヒマラヤ山脈の中でもかなり西側にあり、パキスタンに属している。ヒマラヤ山脈って言ったら、ネパール、インド、ブータン、ウイグル(中国)をイメージする。ヒマラヤ山脈がパキスタンまで続いているなんて知らなかった。

山岳業界では有名な山かもしれないが、日本ではメジャーではないので、原題は『Nanga Parbat』だったのだが、『ヒマラヤ 運命の山』という何だか陳腐なタイトルになってしまっているのだ。
そして、だって実話だったんだもん、といわれてしまったら身も蓋もないが、『アイガー北壁』にしても、なぜにドイツの山岳映画は悲劇的なものが多いのか。(他にも日本で上映されないだけで他にももっとあるのかもしれないが)山で遭難するシーンや指先が壊死している映像、観ていて怖い。

じゃあ、『剱岳 点の記』のようにチームワークと困難の末に登頂に成功する、といういかにも日本的な話がいいか、というとそれも飽きる。

雄大な自然だけでの映像でもつまらない。
とりあえず、山での遭難もリアルすぎるのは勘弁してほしい。

山岳映画はあまり観たことはないが、勝負は何と言っても雄大な山の映像を映画館の巨大スクリーンでいかに見せるかである。山の映像は、『アイガー北壁』、『剱岳 点の記』の方がよかった気がするが、この映画の映像としての面白さは、舞台がパキスタンというところだろう。

サポートの現地スタッフや住民であるパキスタンの山岳地帯にすむ人たちが描かれており、あまり日本ではお目にかかれない映像である。ただ、作り手が意識したのかどうかわからないが、山岳地帯のムスリムは一瞬だけアフガニスタンのイメージを連想させるが、遭難したラインホルトを言葉が通じなくとも助けるし、宗教的な対立云々はみじんにも感じさせない。ただ、遠征隊のリーダー・カールにしても、ラインホルトにしても、山登りが好き、というよりも功名心が強い人物として描かれており、好きにはなれないし、記録のために無理をしたり、犠牲を払うあたりはあまり共感できるものではない。

やっぱり『アイガー北壁』の方がまだよかった。
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