たく

恋をするより得をしろのたくのレビュー・感想・評価

恋をするより得をしろ(1961年製作の映画)
3.4
貧乏暮らしながら実はお宝を隠し持ってた清掃業の男をめぐり恋と儲け話が渦巻く騒動記で、清水まゆみ目当てで観たんだけど彼女は全くの脇役だったのが残念。でも小沢昭一の軽妙な関西弁が明るいムードを盛り立てて、相手がどんな社会的地位にあっても物おじしない清々しさを演出してた。司馬遼太郎の「下司安の恋」を下敷きとした話で、隙間時間に軽く観るのにちょうど良かった。

仕事で回収したゴミの中から何か役立つものを探すことが日課となってる安田安五郎、通称「ゲスヤス」。彼が旧友を通じて知り合った高級クラブのママにゾッコンになるのが、タイトルが意味する「得をするのに忙しくて恋にかまけてる暇などない」というゲスヤスの信条をぐらつかせる。彼がクラブの上客に売りつけようとする骨董品が最初いかにも安物っぽく思えるんだけど、これが上手いミスリードになってて、実はゲスヤスが戦後のどさくさにまぎれてかき集めた数々の骨董品を隠し持ってて、総額1億円を超える価値があるというのが驚きの展開。

一見ケチに見えるゲスヤスが、惚れたママが抱える1,000万円の借金返済を用立ててあげたり、地上げ屋にアパートを追い出された貧乏住民を何とか救おうという義侠心を持つというギャップにやられる。ママの借金返済がめぐりめぐってアパート住民の立退料となる皮肉を経て、ゲスヤスが所持してた骨董品が最終的に会社立ち上げに繋がるというサクセスストーリーが気持ち良い。清水まゆみは終盤でようやくストーリーに絡んでくるものの、何だか取って付けたみたいだった。惚れっぽい男の恋が結局うまくいかないのがちょっと寅さんを思わせて、失恋の悲しみを隠して明るくふるまう姿に一瞬だけ哀愁が漂う。
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