もとまち

ちぎれた愛の殺人のもとまちのレビュー・感想・評価

ちぎれた愛の殺人(1993年製作の映画)
3.6
ネガポジ反転された出雲の海辺に飛び交うウミネコの群れ。岸へと打ち上げられた女のバラバラ死体。のっけから猟奇的なオープニングで物語は幕を開け、その後も異様な気配に満ちたシーンが淡々と続いていく。赤すぎる佐野史郎の教室、屋上に浮かぶ巨大な夕日、青く靄ががかった警察署のセット。赤と青のコントラストを強烈に効かせた照明が印象的で、様々な空間にやり過ぎなくらいスモークを漂わせ、そこに原色の光を反射させることで妖しく幻惑的な空間を作り上げているのが面白い。終盤に登場する地下室のありえないほどの広大なスペース、三台の巨大な換気扇が仰々しく回転する様は映画的なハッタリを大胆に活かしていて感動してしまった。やはり石井隆と組んでる時の池田敏春はめちゃくちゃイキイキしている。もっと色んな作品で組んでほしかった。とはいえ、『サイコ』の焼き直しみたいなプロットにいつもの「名美と村木」の物語を織り交ぜた石井隆の脚本はあまり面白くない。出雲信仰を重要なモチーフに置いた所は興味深かったが、そのせいで物語の混迷具合が増した気もする。横山めぐみの快活なキャラクターは、作中の沈鬱な空気感とは符合せずイマイチ。佐野史郎とのロマンスにも必要性を感じられない。スポーツカーにダッシュで追いつくところは笑った。
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