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女性上位時代のtakのレビュー・感想・評価

女性上位時代(1968年製作の映画)
3.5
ピチカートファイヴのアルバムタイトルにも使われ、3代目ヴォーカルの野宮真貴が好きな映画と公言していたイタリア映画。ひと言で表現すればセックスコメディなのだが、アルマンド・トロバヨーリの音楽と美しいカトリーヌ・スパークが身にまとう色とりどりのファッションの数々で、実にお洒落な映画に仕上がっている。お話はとんでもないけれど、男性として繰り返し観たくなる気持ちも、女性がこの映画に感じる面白さも納得できる。

映画冒頭。画面に等間隔に並んだ黒い椅子。それが葬儀場で、主人公ミミが未亡人となったことが観客に紹介される。「ぜんぜん悲しくないのよね。退屈な葬儀。」と心の声がナレーションとして流れる数分間でヒロインの置かれた状況と夫との関係が観客に示される。弁護士から夫がセカンドハウスを持っていたことを告げられ、彼女はそこで夫が他の女性と密会を重ね、変態じみた性の饗宴を繰り広げていたことを知ることになる。彼女はそれを機会に自分も性の世界を楽しむと心に決め、次から次へと男性関係を重ねていく。暴力的な男もいればマゾ趣味の男もいる。夫の友人でもあった弁護士にアバンチュールもほどほどにと忠告されるが、彼女の暴走を止められない。そんなとき真面目そうな放射線科の医師が彼女の前に現れる。

人と違う性癖があることは、それぞれの好みだし恥じることではない。主人公ミミもこの経験を通して男性におんぶしてもらうことの快感を知ることになるという結末。結婚を申し込み、彼女の遍歴を知った後。それでも彼女を受けとめるという彼に屈服する主人公。ラストシーンで、ジャン・ルイ・トランティニャンの背中にカトリーヌ・スパークがまたがる場面は可笑しくもあり、微笑ましくもあり。男と女も結局お互いが好むことを受け入れられるかがうまくいく秘訣なんだろう。淫らな物語でありながら、男と女についてちょっと考えさせる大人の為の映画。男と女って、深いねぇ。
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