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ヘッドライトのHKのレビュー・感想・評価

ヘッドライト(1955年製作の映画)
3.8
モノクロ・スタンダード。ジャン・ギャバン主演のフランス映画の古典。
これまで恋愛モノやメロドラマ系は基本避けてきたので名作とは知りつつも初見。
今回観た一番の理由は、共演のフランソワーズ・アルヌール(当時24歳)の出演作をまだ観たことがなかったから。

フランソワーズ・アルヌールと言えば50~60年代のフランスの人気美人女優ですが、石ノ森章太郎の『サイボーグ009』の紅一点003のモデルでもあり同じ名前なのは有名。
今回じっくり本人を見て、石ノ森氏の描いた原作マンガの003にプックリしたホッペタのラインや鼻の形などに面影があると確認できました。
意外と石ノ森氏が描く女性キャラ全般に影響している気もします(アニメ版はシリーズによって顔が違いますが)。
ちなみに002のジェット・リンクは『ジャイアンツ』のジェームズ・ディーンの役名ですね。こちらは全然顔は似てません。

で、本作ですが初老の長距離トラック運転手(ギャバン)と若いウェイトレス(アルヌール)のベタな不倫モノで、今もし現代に置き換えて映画化したらもうドロッドロになりそうであまり見たいと思いません。
昨今では倫理観を問われていろいろと言われかねない内容ですが、そこは当時の時代表現でもあり、フランス映画だし、ギャバンとアルヌールだからこそのこの風情だと割り切るべきでしょう。

本作はジジイと若い女性の非現実的歳の差パターンとも言われていますが、実は初老に見えるギャバンは当時まだ51歳(そうは見えない貫禄ですが)。
なんと今だと福山雅治、大沢たかお、佐々木蔵之介あたりとほぼ同じ年齢。
やっぱり当時は平均寿命も短い分、今より老けるのがだいぶ早かったんですかね。

監督のアンリ・ヴェルヌイユは恋愛モノから戦争、アクション、ノワールまで器用になんでもこなす職人監督ですが、本作や『冬の猿』など地味な人間ドラマの方に味わいがあるように感じます。

この監督トラックが好きなのか後の『太陽の下の100万ドル』もジャン=ポール・ベルモンドとリノ・ヴァンチュラらが大型トラックで延々追っかけっこをする映画でした。

相変わらずギャバンが食事するシーンは何でも美味そうですね。
フランスパン切ってバターとチーズ塗ってるだけなのに。

原題は“Des Gens Sans Importance”(重要でない=とるに足らない人たち)ですが、本作は邦題もシックリきます。
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