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荒野の七人のCinemanのレビュー・感想・評価

荒野の七人(1960年製作の映画)
4.0
《乱れ撃ちシネnote Vol.62》
『荒野の七人』
ジョン・スタージェス監督

1961年5月3日。
ロードショー公開初日に渋谷パンテオンに駆けつけました。

時代の流れにおされて衰退する西部劇の最後を飾った超娯楽大作!
軽快なテーマミュージックとともに
メキシコの貧しい村に盗賊と戦うためにやってきた7人のガンマン。
そして、この作品に起用された若手俳優たちの人気が急上昇した記念碑的作品です。

【Story】メキシコの寒村イズトラカンには毎年刈り入れの時期にカルベラ率いる盗賊がやって来て農民たちが生き延びることができるだけの作物を残しすべてを持ち去ってしまう。

なんとかしなくてはと長老に相談しに行くと街に行って拳銃を買い盗賊たちに立ち向かうしかないと諭されます。
なけなしの財産をかき集めミゲル(ジョン・アロンゾ)たち3人の農民が代表して国境沿いのテキサスの小さな街に拳銃を買いに行きました。

街では行き倒れの先住民の死体を誰も葬らないので見かねた行商人たちが金を出して埋葬しようとしていました。
ところが棺桶を運ぶ馬車の御者が見つからない。
住民たちは先住民を自分たちの墓に埋葬することを嫌い誰一人霊柩馬車の御者になろうとしないためだ。
3人の農民が街に到着したとき、ことの成り行きを見守る住民で街中が緊迫している最中だった。

1人の流れ者のガンマンが御者を名乗り出て馬車に乗り込んだ。
それを見たもう1人のガンマンが助っ人を買って出る。
ライフル銃と銃撃戦後の霊柩車の弁償代を借りた二人のガンマンは
ゆっくりと丘の上の墓場に向かって霊柩馬車を走らせた。
最初に名乗り出たクリス(ユル・ブリンナー)と助っ人のヴィン(スティーブ・マックイーン)は2階の窓や屋根に隠れて彼等に発砲する狙撃者たちを撃ち落として墓地まで死体を運び、
墓地の入り口で銃を構えてかれらを阻む数人の住人も難なく退けて先住民を埋葬した。
街は大歓声に包まれた。

この有様を目にしたミゲルたちは「銃の買い方と撃ち方を教えてくれ」とクリスに頼みに来たが
クリスは「銃を買うよりガンマンを雇った方が安上がりだ」と助言する。

農民たちは「あんたがやってくれないか」とクリスに懇願する。
腹いっぱい食べられるが期間は6週間で報酬は一人20ドルという割の合わない条件だったが、
ミゲルたちの悲惨な状況を聞いてクリスは引き受ける。
そして腕の立つガンマン探しが始まった。
40人の盗賊に立ち向かうには7人の腕の立つガンマンが必要だったが噂話を聞きつけたヴィンが最初に助っ人を名乗り出た。

クリスとヴィンのガンマン探しが始まった。
儲け話に目がないクリスの旧友ハリー(ブラッド・デクスター)が一口乗せろと言い寄ってきて、
歴戦の勇士だが今は一文なしで薪割りをしていたベルナルド(チャールス・ブロンソン)、
投げナイフの名人ブリット(ジェームズ・コバーン)、
凄腕の賞金稼ぎだが今は追われる身のリー(ロバート・ヴォーン)がそろい、
勝手についてきたガンマン志望の若者チコ(ホルスト・ブーフホルツ)を加えた7人はメキシコの寒村に向かった。

農民たちに銃の撃ち方を教え、
周囲に石を積んで村を囲んで準備が揃ったころ盗賊たちがやってきた。

【Trivia & Topics】
*ご存知黒澤明監督の傑作『七人の侍』のリメイク。
黒澤作品の持っている壮大さ、人間描写、緊迫感、ヒューマニズムなどに裏打ちされた重厚さとは比べものにならないけれどリメイク作品としてはかなりレベルの高いエンタテイメント作品です。

*大スター1人が6人の若手と共演。
・ユル・ブリンナー:『王様と私』(1956)でアカデミー賞主演男優賞受賞のスター俳優。

・スティーブ・マックイーン:1958年〜1961年TV放映された「拳銃無宿」で人気を得る。

・チャールス・ブロンソン:1958年〜1960年にTV放映された「カメラマン・コバック」で人気を得る。

・ジェームズ・コバーン:1960年〜61年に放映したTVドラマ「風雲クロンダイク」出演中。

・ロバート・ヴォーン:テレビドラマで脇役などで活躍していたが本作品で一躍有名になり1964年から1968年のTVドラマ「0011ナポレオン・ソロ」に出演。

・ブラッド・デクスター:本作品で注目を浴びる。

・ホルスト・ブーフホルツ:ドイツのジェームス・ディーンと言われたブーフホルツは1960年にハリウッドに進出。『荒野の七人』の出演者クレジットの一番最後に“Introducing HORST BUCHHOLZ”と紹介されている。

本作はこのように若手TV俳優に囲まれた大スター、ユル・ブリンナー主演の映画で、
TV俳優たちはこの映画で人気急上昇することになります。
マックイーンはブリンナーと揃って画面に登場するシーンでは小技をきかしたアドリブを演じるためにブリンナーに嫌われました。
ブリンナーは撮影中にイライラしていたそうです。
それを頭に入れて観ると「これはアドリブだな」と思わせるシーンがいくつもあります。
一か所お教えします。
映画が始まって13分あたり。
御者台のクリスの横にすわったヴィンが散弾銃に弾を込める時に薬莢を耳元で振って中身を調べます。
これはアドリブです。
大スターから観客の目をそらして自分に向けさせるためのマックイーンの手口です。

拳銃を撃てないブリンナーはマックイーンに拳銃の使い方を教わりました。

*ジェームス・コバーンの小躍り。
ロバート・ヴォーンとジェームズ・コバーンは大学時代からの友人同志。ヴォーンから『七人の侍』のリメイクが企画されていることを耳にしたコバーンはスタージェス監督に直接連絡をとりました。
『七人の侍』アメリカ公開当時に何度も劇場に観に行ったほど大好きな作品だったのでコバーンは原作では宮口精二が演じた役に配役されたことを知ったとき小躍りして喜びました。

*西部劇の時代を見事に終わらせた傑作。
ジョン・フォードらが築いたハリウッドの西部劇時代の終わりを飾る傑作です。
『荒野の七人』公開後の1964年にイタリア製作の西部劇『荒野の用心棒』が公開されマカロニ・ウエスタンの時代を迎えました。

*無断に映画化権を許諾した東宝への黒澤監督の怒り。
東宝は『七人の侍』の脚本を執筆した原作者たち=黒澤、橋本忍、小国英雄の3人に何の断りもなくリメイクを許諾しました。しかも東宝に支払われた映画化権の対価はわずか250ドル!。

*黒澤監督の感謝。
黒澤明監督はこの映画を見た後にジョン・スタージェス監督に感謝の印として日本刀を贈りました。

【5 star rating】☆☆☆☆
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