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311のarchのレビュー・感想・評価

311(2011年製作の映画)
2.8
3.11のドキュメンタリーとして、その2週間後にはカメラを動かし始めたという即時性には価値があるが、内容はやはり準備不足で表層的な内容にとどまっている。
10年以上が経ち色々と映像や証言が出ている中で、仕方ないにせよ、現在から観ると表層的な記録以上の価値はない。

ただ、面白いのは、主題の表層をなぞるだけの映像群は、その主題よりも ドキュメンタリー作家のエゴを前景化させ、ある種のセルフドキュメンタリー的になっているところだ。

ドキュメンタリーの加害性は果たしてその意義によって仲裁可能なのか。彼らドキュメンタリー製作陣はメディアを名乗るが、カメラを持てば、ドキュメンタリー作家であれば、その特権を有しうるのか。
途中で「この憤りをぶつける先がない」と被災者の方が話す。対して
森達也は「なのか言葉にしたいのなら私たちにぶつけてください それが私たちの役目ですから」と言う。
その言葉に対して、返答はない。
森達也の言葉にはそれこそ、ドキュメンタリー作家(メディア)の在り方が表れていると考えることも出来るが、それは何か"役目"を担っているという倒錯の表れでもある。
多くの人にとっては「お前誰やねん」でドキュメンタリー作家のエゴ、ここに極まれりなのだ。

そういったドキュメンタリーについてのドキュメンタリーとして、その功罪をよく映した作品になっている。
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