子供のころに母親から壮絶な虐待を受けながら生きてきた、原田美枝子演ずる主人公の女性。容赦のない折檻の描写や、日本と台湾という国の間で翻弄されるその半生も劇的なものではある。
しかしこの映画で最も胸を打たれるのは、何といっても台湾への旅を終えた後に訪れるクライマックスの場面に尽きる。
合成を取り入れたカットを巧みな編集でつなぎ合わせ、息を呑む緊張感の中で描かれるシークエンス。その静けさと濃密さは、安易な感動とは違う強いインパクトと胸のざわめきを見る者に残していく。一人二役の原田美枝子の熱演も相まって、自分にとって長く忘れることのできない作品となった。