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グリーン・デスティニーのhoshのレビュー・感想・評価

グリーン・デスティニー(2000年製作の映画)
3.3
BSで鑑賞。天下の名剣「青冥剣」を巡って巻き起こる悲恋と体術のぶつかりあいを描く。非英語作品にしてオスカー候補となった名作。

ミシェル・ヨー、及びエブエブの第95回アカデミー賞受賞を見越しての番組編成かと。お見事。そしてこれを見ると今の評価は遅すぎたと言わざるを得ないほどミシェル・ヨーの佇まいと体術は素晴らしい。リーとの恋心に揺れる女の顔とイェンを導く母、師としての顔、非情な剣士の顔。そのどれもを説得力をもって演じている。

彼女の存在があればこそ、今作が意識的な女性が鳥かごから出て自由に振る舞う という現代に通ずる描写が伝わってくる。正直今見ると少し古いが(当時としては進んでいるし違和感は軽い方)この積み重ねがエブエブのような多様性を孕んだ作品が評価される時代に繋がると思うと興味深いし、再見されるべき作品ではないかと。

アクションと撮影も素晴らしい。ジャッキー映画とも共通する限定空間を活かす、カメラを必要以上に振らない、打撃がどこに入ったかわかる、という香港アクションの良い所がアメリカ資本の本作でもちゃんと生きている。そこにアン・リー節となる美しい自然の香りを感じる凝った構図が持ち込まれるので良いに決まっている(西部劇タッチのローのくだり)。酒場の立ち回りは待ってましたと。嬉しかった。

が、まあ脚本が酷い。集中してみていても話が入ってこない。人物の相関、行動動機が非常に不明瞭。そのため感動パートに入っても心が動かない。中盤のローとの恋愛も急に挟まれることで映画の流れを切っている。ラストの毒薬の流れも然り。話の流れが線ではなく点。チャプターごとに見せられている感覚なので、話にいまひとつ没入できない&目的が分からない。
素晴らしい役者陣(チャン・ツィィー美しすぎる)、体術、撮影、演出があるのに話の部分で足を引っ張っているとさえ思う。ここさえしっかりしていればより格調高い名作たりえたはず。(エンタメとしては楽しいけど今作は明らかに文芸的なテーマと空気感で勝負しているので)
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