このレビューはネタバレを含みます
ナチスドイツとユダヤ人パルチザンの戦いと、ユダヤ人集団の生き残りをかけた撤退戦の物語だったよ。
ロシアのパルチザンも物語に組み込まれており、その一員となった弟ジュス(リーヴ・シュレイバー)は好戦的な性格であったため、兄トゥヴィ(ダニエル・クレイグ)とは反りが合わず、ユダヤ人パルチザンから抜けてロシアのパルチザンとしてほぼ行動していた。
だが、最後はジュスがトゥヴィたちユダヤ人集団を危機一髪のところで助ける役目を担っていたよ。
全般的にインパクトの薄いストーリー進行で、要所要所のアクシデントも特段の強い印象は受けなかった。
が、後半で存在感が急激に増した末っ子のアザエル(ジェイミー・ベル)が、実質的に求心力と誠実さと活力と知性のバランスの取れたリーダーだったように見えたよ。
逃げ切った後、終戦までの2年間を森の中で生き抜いたユダヤ人たちの数は、終戦時点で1200人に達していたとのこと。
そして、その子孫たちは現在、数万人に及ぶとのことだった。
『シンドラーのリスト』のシンドラーもそう。
『ラスト・フル・メジャー』のウィリアム・H・ピッツェンバーガーもそう。
『ディファイアンス』のビエルスキ兄弟もそう。
ごく数人、否、たった一人の人間の熱意が、未来に生きる多くの命の誕生へとつながってゆくという事実は、非常に深い感銘を受けると同時に、大いに学びになるよ。
映画自体については、戦闘シーンなどでサブリミナル的なコマ送り映像になる点が、妙に作り手側の恣意的な印象を受けたので、もう少し自然に戦闘シーンを表現すれば良かったように思うよ。
それから、ドイツ兵に銃で脅されてレイプをされ、妊娠した女性の心理描写を、もっと丁寧に扱うべきだったと私は思うよ。
「この子だけが私の希望の光なの」というセリフは特にだ。
女性を銃で脅してレイプするような男の子どもに希望の光を見出すレイプ被害女性の複雑な心理を、あまりにも雑に描き過ぎていた印象を受けたよ。
テーマや題材が良かった分、細部の手抜きが目立って勿体無い気持ちになった。
それにしても、ダニエル・クレイグ氏は、当時40歳だったこの映画でも、50歳を過ぎた今でも、見た目年齢があまり変わらないな。
そもそも『007 カジノロワイヤル』撮影当時の彼は、アレで37歳だと言うのだから、えらくシワの深い貫禄のある顔なのだな、と改めて思ったよ。
以上かな。