るい

土のるいのレビュー・感想・評価

(1939年製作の映画)
3.7
今読んでる「写楽を追え」の著者内田千鶴子さんの義父が内田吐夢監督だったということで、ちょっと内田吐夢監督ブーム!なので何本か見たいと思っております。

この作品は、戦後日本にフィルムが残っていなくてドイツの国立映画ライブラリーにあったものをもう一度日本に返してもらったものだそうです。

再生するとわかりますが、ドイツ語字幕がついており、音が飛んだりします。でもフィルムが日本に帰還し、修復されてもう一度見れる事は本当にありがたい。

フィルムの劣化、マイクの性能、訛りがあるセリフなのでほとんど聞き取れないんですけど、画面から伝わってくるものはめちゃくちゃある。構図も素晴らしい。

貧しい百姓である勘次一家。妻に先立たれ、二人の子供がおり、舅とは折り合いが悪い。年貢を納めるのも精一杯で、地主さんとこに仕事をもらいにいく。

とにかく貧しいしその生活は辛い。でも娘のおつぎはしっかり父を支え、弟の与吉と爺の面倒を見る。お米がたくさん収穫できて嬉しくて収めるのを少し待って欲しいと言う。父には断られるが、そういう小さな幸せの中に一生懸命に生きている。

貧乏人の生活を包み隠さず曝け出したこの作品に人間の強さを見たが、その家に生まれたというどうしようもない身分の格差にはやりきれなさも残った。
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