April01

いま、会いにゆきますのApril01のレビュー・感想・評価

いま、会いにゆきます(2004年製作の映画)
3.6
いまさら初見。まず思ったことは、タイトルが凄い。いま&ゆきますが平仮名であること、そして行きますではなく、ゆきますであること。
このタイトルが、そのまま本作の核心であり、誰が誰に会いに?という思い込みを覆す驚きはミステリーでもある。

本作がどれだけ涙腺を刺激するかは、たぶん多くの方が書いているところだろうし、自分も序盤から泣いてたくちだけど😭感動した!の一点張りでは面白くないので、あえて違う視点からの想いを。

この選択は一般的な女性にとって、実際は一択でしかなく、その選択をするからこその涙なわけだけれど、違う選択することもアリなんですよ!と言いたい気もする。
自分の子供にママと呼ばれて、あれだけ甘えられたら、そっち選ぶよね、選びましょうというズルさがある、この話には。

そして一見、男女のラブストーリーに見せているけれど、究極を言えば、あの選択はひとえに子供を存在させたいという親の愛に尽きると思う。
ついでにその子供は夫なしでは生まれないわけだから、愛の結晶として生まれる子供、という美談であることも、この物語が美しい理由の1つになっている。

子供を愛せない親もいる、愛することは義務なのか、母性神話の盲信という問題提起について最近考えたりしていて、さらに自分が時には偽善とまで呼んでしまう多様性呪文の観点からすれば、会いにゆかなくてもいいよ、と言ってくれる人も必要じゃないかな。

そして子供の命が大切ということであれば、澪にだって産んでくれた親がいるわけで、彼女の選択が彼女1人で短時間に決められてしまう点、彼女および夫の親が全く登場しない点には、完璧な美談にすべく講じられた作為を感じる。

いま、会いにゆきません、というドン引きの選択をした場合の、パラレルな世界を描いて、それがひょんなことで交差してしまう的な、手の込んだ話を見てみたい気もする。
そういう想像を膨らませることができるのも、そもそも本作がとても出来の良い泣かせる美しい物語ゆえであることは間違いない。
April01

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