ジーナ

リリー・マルレーンのジーナのレビュー・感想・評価

リリー・マルレーン(1981年製作の映画)
3.9
ファスビンダー晩年の作品。
第二次世界大戦真っ只中のドイツとスイスを舞台に、様々な人物の思惑により翻弄される恋人同士の顛末を描く。

ユダヤ人の音楽家であるロバートは、父の立ち上げたユダヤ人救済を目的とした組織の一員としても活動していた。
そんな彼にはアーリア人である恋人ビリーがいた。
ビリーはナチス支持者という訳でもなく、自由奔放に生きる明るい性格であり 、ロバートはそんな彼女と婚約する。
しかし、ロバートの父の反対にあってしまい、彼の画策で2人は国境を超えて離れ離れになってしまう。
その後、世界では第二次大戦が勃発するのだが、ビリーはドイツで「リリー・マルレーン」という曲をレコードで発売し、大ヒット。
一躍スターへと昇り詰める。
そんな曲がヒトラーらにも気に入られた事で彼女は意図せずナチス・ドイツと近しい関係となり、それがロバートの反感を買ってしまう...

いやぁ、傑作ですね!
主人公ビリーを演じるハンナ・シグラの歌声がたまらなく美しく、心地よい。
そんな彼女の歌声をバックに酒屋で行われる狂騒や戦地での爆撃シーンが重なる演出が面白く、悲しく、何とも言えなくなる。
そして兵士達はその歌にどんどん魅了されてゆき 、戦地でこの曲が流れると手を止めて聞き入り、皆が涙を流してゆく...
このシーンはどの反戦映画よりも戦争の愚かさを感じさせてくれて胸が痛くなります。

ある人物への拷問まがいのシーンは映画を観ている者すら苦痛を感じる程、秀逸な演出となっている。

戦争映画としても、メロドラマとしても、非常にバランスの取れたストーリーですし、ラストがいかにもファスビンダーらしい終わり方でイカす。

ファスビンダー映画の中でもとりわけ予算がかけられているのが明確で、大衆寄りの作品だと思う。

VHSで見たのですが、画質も音質も悪いのが残念。
DVDはプレミア付いてて手が出ませんし、Blu-ray出してくれないかなぁ...
ジーナ

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