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ギフトのtntnのレビュー・感想・評価

ギフト(2000年製作の映画)
4.3
サム・ライミは、こんなに美しく悲しい映画も作れてしまうのか。
「チェーホフの銃」メソッドを完璧に体得しているという印象。画面に出てくる小道具や設定が、ほぼ全てその場面の中で有機的に働いている。だから劇的な展開がなくとも、無駄のない構成によって面白く感じられる。それは、『ダークマン』や『死霊のはらわた』みたいなジャンル映画よりも、今作のような人間ドラマにおいて最も真価を発揮する。
オープニングの湿地帯を映す画面の美しく不吉な予感から画面に釘付けだった。
「The only witness to the crime wasn't there」というポスターの言葉が端的に表すように、主人公の亡き夫、事件の被害者と真犯人など、「ここにはいない誰か」がずっと画面に影を落としている。その不在を受け入れることと、主人公が自分にかけられた呪いを受け入れることが重なる。この点で、サム・ライミ映画はずっと一貫している(『スパイダーマン』でさえも)し、『デッドゾーン』『ヒアアフター』『メッセージ』なんかも思い出した。『メッセージ』はかなり近いと思う。
今見ると、随所で夫から妻・子供への暴力が繰り返し描かれており、男性性という悪夢が描かれる。主人公が証言台に立つ場面の居た堪れなさといったらない。
ギフトとしての超能力を持つ主人公が、それによって否応なしに募る「不在の対象」への思いを必死に抑えながら生き、ついには不在も不可逆な時間にも僅かな折り合いをつけるとてつもなく切ない映画でもある。謎解きもちゃんと面白い。随所のホラー演出(水の不吉さ!)もかっこいい。ケイト・ブランシェットってわかってはいたけど、ここまで良い俳優だったんだ。
珍しく粗野でクズ野郎のキアヌ・リーブスが法廷に現れるとジョン・ウィックになる。
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