スギノイチ

大江山酒天童子のスギノイチのレビュー・感想・評価

大江山酒天童子(1960年製作の映画)
3.5
50年前の映画なのに、まるで近年の歴史系ゲームOPかと見紛うような映像センス。

オールスターキャストの中、勝新や雷蔵が脇を支え、大スター長谷川一夫が酒天童子を演じる。
生首鬼、鬼婆、牛鬼、土蜘蛛…魑魅魍魎を率いて源氏へ攻め込む妖怪軍団の大ボスだ。
いつもの善玉と違って立場的には悪役だが、やはり一番良い所は全て持っていく。

酒天童子の手下である手から糸を出すオッサンが巨大な土蜘蛛に変化するシーンは中盤のハイライト。
『ゴジラの息子』のクモンガの操演なんかと比べるとそりゃ確かに分が悪いが、刀をブスブス刺されて真っ赤な血を流し、オッサンの声で断末魔をあげて死ぬ所なんて風情がある。
また、後半では鬼童丸というワイルドな妖怪が牛鬼に変化し武士と戦うシーンもある。
どっからどう見てもハリボテだが、幻想的な照明や音楽によって不思議と「アリ」になっている。

内容的にはB級でも、キャスト・スタッフは一流どころの怪奇時代劇。
『里見八犬伝』や『魔界転生』の源流という感じか。ああいうのが好きな人ならこれも気に入るだろう。
しかも、大映時代劇の豪華絢爛な美術が加わっているのだ。
土蜘蛛といい牛鬼もハリボテっちゃあハリボテなのだが、祭りの山車(だし)を思い出すような佇まいは逆に絵巻物的でさえあり、神楽や祭礼を観ているような気分になる。
冷静になってみるとラストなどは尻すぼみも甚だしいのだが、それまでの絢爛さで何だか満足してしまう。

ところでこの映画、無法者達が乱暴狼藉を働くシーンがやけに多いが、未遂とはいえゴロツキが10歳ぐらいの女の子に手を出そうとするシーンがあるのはビビった。
だが、そんな輩は長谷川一夫大先生によってすぐ粛清されるので安心だ。
スギノイチ

スギノイチ