櫻イミト

狂った蜜蜂の櫻イミトのレビュー・感想・評価

狂った蜜蜂(1968年製作の映画)
3.0
「スパズモ」(1974)のウンベルト・レンツィ監督が初めて手掛けたジャッロ。「ベビイ・ドール」(1956)などのハリウッド大物女優キャロル・ベイカーがイタリアに渡って主演したジャッロ三部作の第一作。撮影は「スパズモ」のグリエルモ・マンコリ。音楽はヒット曲「マナ・マナ」(1968)で知られるピエロ・ウミリアーニ。原題「Orgasmo(オルガズモ)」。

夫の死によって莫大な財産を手中にしたキャスリン(キャロル・ベイカー当時38歳)は休養のためローマの別荘に滞在へ。それが数日後、別荘を訪れた若い旅行者ピーター(ルー・カステル)に誘惑され寂しさから体を任せてしまう。以降、別荘に居ついたピーターのところへ妹と名乗るエバがやってきて、三人の淫乱な生活が始まるが。。。

「スパズモ」を観てレンツィ監督に興味を持ち初期作を鑑賞。初期の日活ロマンポルノ路線(1971~)を連想するような、B級ぽさ漂うエロティック・サスペンスだった。

金持ち未亡人の別荘にピーターが居つくシナリオが強引で、序盤から話の展開は予想できた。途中にちょっとした布石がありラストの意外なツイストに繋がるのは良かったが、本編の大半を占める未亡人の軟禁状態が長くて中弛みを感じた。大音量のポップ音楽を用いた精神攻撃、主人公のやつれメイクがラストに向けて酷さを増していく演出は印象深かった。

1960年代末期を感じさせる劇伴や、当時イタリアのダンスホールの描写は時代を感じさせるもので好み。サイケなイメージカットと主人公の容赦ない顛末にはレンツィ監督の個性が感じられた。

本作はマニアックなファンからは高評価を受けているが、個人的にはベイカーがあまり好みでないことと、B級エロス映画の苦手な方のチープさが気になってしまい、日活ロマンポルノと同様にあまり合わなかった。しかし、ジャンルの中での意欲作とは思われたし、娯楽映画大国イタリアの底を覗いたような感慨はあった。

※ルー・カステルは「ポケットの中の握り拳」(1965)で主演した鬱屈青年役が絶賛された。
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