ベビーパウダー山崎

女と味噌汁のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

女と味噌汁(1968年製作の映画)
3.5
人生に疲れたおっさんたちがひとりまたひとりと癒やしを求め池内淳子に引き寄せられていく。「女と味噌汁」、妻でも彼女でもない夜の女と古き良きおふくろの味、つまり男たちが行き着く先は「娼婦と母親」。ウディ・アレンとかそのまんまだが、男性の表現者が好む理想の女性(究極の女性像)、よく描かれるテーマの一つ。
現状に満足できず閉塞感、中年になり改めて自分を見つめ直すおっさんに川崎敬三、佐藤慶、田中邦衛。どれを選んでも地獄だと思うが、凛とした態度でひとり生きていく池内淳子はさすがです。地に足つけた市井の人々と同じ目線で映画を撮る五所平、大衆の必死さを美化するわけでも腐すわけでもなく、その思い通りにならない社会でもがく彼らをただ誠実に映す。生きて、労働して、また生きていく。素晴らしいね。これが劇場映画の最後かな。『恐山の女』で終わらなくて本当に良かった。池内淳子が耳くそをほじる「手」ではじまり、夜の街に消えていく「足」でおわる。