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インディア・ソングのsonozyのレビュー・感想・評価

インディア・ソング(1974年製作の映画)
4.0
フランスの作家マルグリット・デュラスによる自身の同名著作の映画化。
原作は小説とも戯曲ともレーゼドラマ(上演を目的とせず読まれるための戯曲)とも呼べるような超ジャンル的なテクストということですが、この作品も、映画・舞台・レーゼドラマが融合したような不思議な作品でした。

舞台は1930年代のインド・カルカッタのフランス大使館。
主役のフランス大使夫人 アンヌ=マリー・ストレッテル(デルフィーヌ・セイリグ)と、愛人のリチャードスン、別の愛人、新任のオーストリア大使のアタッシュらが、ドレッシーなファッションで、大鏡とピアノのある部屋を中心に、スローに歩いたり、佇んだり、ダンスしたり。

ストーリーと呼べるようなものはなく、漂うように存在する登場人物がセリフを語ることもなく、画面外の人物の声(映像の解説や、背景や過去の記憶の話や、噂話など)、物音、そしてラオスのサヴァナケットから10年も歩き続けてたどり着いたという狂った物乞いの女性のラオスの言葉による声や歌(姿は見えない)などが、映像(フレーム)の外側を包んでいるような不思議な感覚。

この静かな世界に、異質な存在が一人、神経の発作である事件を起こしたラホールの副領事。
彼はアンヌを愛していて、いつも離れたところからアンナを見てなぜか涙を流したりしているが、恋愛関係までは求めておらず(童貞らしい)、一度だけアンヌとダンスをする。

アンヌからこの地を去るべきだと言われ、フレームから消えた後で、大声でわめきだす。「俺を追い払うな!俺は残るぞ!1度だけ彼女と島に行くんだ!」。
アンヌが表情変えず静かに佇む映像(フレーム)の外からこの声だけしばらく聞こえてくるのが切なく可笑しい。

背中と胸元が大きく開いた赤いドレスで愛人と静かにダンスしたり、床に黒いシルクのネグリジェで胸をはだけ、男と並んで寝ていたりのアンヌ(デルフィーヌ・セイリグ)の魅惑。

繰り返し流れる印象的なピアノ曲「インディア・ソング」が沁みる、すべてが幻のような作品です。
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