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インディア・ソングのzhenli13のレビュー・感想・評価

インディア・ソング(1974年製作の映画)
3.8
デュラスの監督作品は『アガタ』を大昔に観たくらい。ビュル・オジエの柔らかくか細い声と海辺の風景だけ覚えてる。あれも声の映画だったのだ。『24時間の情事』もそういう要素はあった。
『インディア・ソング』の声の扱いには自律性があり、後半は(おそらくデュラス本人による)実況解説みたいな要素が増えるが、夜会のシーンあたりまでは登場する人物の会話もある。当該人物らが画面からゆっくりとフレームアウトすると同時に彼らの会話となる。副領事も本人の姿は見えないなか、執拗に怒鳴り続け、その後も思い出したように遠くから叫び声を響かせる。過去の出来事として語られるような画との時制のずれがあるかと思えば、解説もあり会話もある。しかし画との同期はされない。
固定長回しでヤン・ブリューゲルの静物画のように深く濃い影を伴う部屋を映し、まさにnature morte、死んで静止しているかのよう。と思うとお香の煙だけ常にたなびいてたりする。方向性と主客を見失わせる大鏡を使った構図など、綿密に計画された画の強度によってずっと観ていられる。ゆらゆらと漂うように入ってくるカルロス・ダレッシオの音楽によるところも大きい。
360度撮ってそうな長い横移動。朝になり白いワンピースに着替えたデルフィーヌ・セイリグがゆっくりとズームアウトするカメラのもと、これまた白や淡い服を着た四人の男を伴って白黒大理石の廊下を歩くシーンの、それまでの濃い闇を払拭するような鮮やかさ。
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