明石です

狼男アメリカンの明石ですのレビュー・感想・評価

狼男アメリカン(1981年製作の映画)
4.4
ロンドン近郊の人里離れた村へ旅行にきたアメリカ人バックパッカーが、地元の人々に謎の冷遇を受け、あてどもなく夜の野原を歩いていると、狼らしき怪物に襲われ、1人は即死。もう1人が狼男に変身し、ロンドンを舞台に暴れまわるお話。面白かった!ロン·チェイニーJrの元祖『狼男』はハリウッドスタジオの中で撮影されていたし、前年の『ハウリング』もたしか小さな村が舞台。こういうクラシカルなモンスターが、現代の街を舞台に活躍(暗躍)するのはロマンがあって良いなあ。ジャック·ザ·リッパーばりの連続殺人として扱われ、街を恐怖に陥れるこのリアルな感じ。

『ブルース·ブラザーズ』のジョン·ランディス監督作らしく、ホラー映画というにはあまりにコミカルな作劇で、怖いというよりはやっぱり可笑しいが先に立ってしまう。Filmarksのジャンルのジャンル分けでも「コメディ」に分類されてるし笑(個人的にはホラーコメディだと思うけど、サム·ライミの『死霊のはらわた』シリーズより前にホラーコメディというジャンルが存在したのかは謎)。怖いところはしっかり怖く、それ以外は基本的には剽軽笑。BGMの使い方も大仰で、まるで画面の中で恐ろしいことなんてひとつも起こってないかのよう笑。あからさまにふざけるのではなく、大真面目に作ってこの作風になった感じが素晴らしいですね。これ以外にはやりようがなかった感じ。

狼に襲われ死んだはずの友人が、だんだんと朽ちていく体とともに主人公の前に姿を現し、狼男の生態についての情報を与え、唯一の解決策は「自殺」だと助言するの好き。他にも、主人公が狼男から人間に戻った朝に、動物園の狼の檻に裸で寝ていて、服を調達しながら家に帰るくだりとか、狼男に変身した彼が夜な夜な殺した人達が幽霊になって出てきて説教をし「自殺しなよ」と薦める乾いたユーモアにも声出して笑った。

監督がデビュー以来コンビを組み続けてる特殊メイクの神様リック·ベイカーの手管は言わずもがなお見事でした。満月の夜に、体から毛が生え爪が伸び、顔も縦長に伸びて鼻が突出し、狼そのものに変身する名シーン。80年代のロードショーで数多の子供たちにトラウマを与えたというのも頷ける。今見てもけっこうリアル。というのも直前に公開されたジョー·ダンテの『ハウリング』を見て、そのあまりの出来に焦り、変身シーンだけを後撮りで撮り直したとか。個人的には『ハウリング』のあの生々しさが好きでしたが、そもそも狼「男」というよりほぼ完全な「狼」に変身する本作のアイデアは素晴らしく、CGのCの字もない時代に、特殊メイクだけで(しかもなぜか全てが丸見えな明るい部屋の中で)これをやってのけた技術に感服した。
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