RAY

ツナグのRAYのレビュー・感想・評価

ツナグ(2012年製作の映画)
3.7
“ツナグのは何か”


僕はこう言う作品を観る時、どう言う訳か、ぎゅーっと魂を掴まれた様な気持ちになります。
たとえば、『黄泉がえり』もそうでした。
“ぎゅー”っと言う気持ちは、伝えるのがとても難しいのですが、どこか怖い気持ちでもあり、どこか安心出来る気持ちであり、どこか悲しい気持ちでもあり、希望を持てる様な気持ちでもあります。

僕たちはいつも日常を日常だと思うし、そうやって過ぎて行くことが多い。
困ったことに、大切な誰かとは距離が縮まれば縮まる程、ぶつかったり、傷付けあったり、時には愛情が憎悪に変わってしまうことだってあります。
その度に大切さに気付き、やり直して行く事が出来るのもまた僕たち人間なのですが、“死”はそのやり直しを待ってくれないかもしれません。


この映画は、“ツナグ”が主人公です。
“ツナグ”とは、死者と人を会わせる仲介をする役割。
“ツナグ”は松坂桃李さん演じる、“生きた”人間なので、仲介の依頼は生きている人間から受けることになります。
正直言って、この映画の中での依頼は特別に感情移入出来なかったのですが、この様な映画で思うのは、残された者の“想い”と亡くなった者の“想い”についてです。
僕はどんな人にもその人にとって大切な人はきっといると信じているのですが、それが“死”をきっかけに離れてしまったとしても、きっと繋がっていると思うのです。
そういう意味で、生と死について、ある人との繋がりについて考えさせてくれるこの作品は、僕には複雑な感情を抱かせるのだと思います。


余談ですが、この作品をはじめて観た時、“ツナグ”が人間と死者を会わせる場として利用するホテルにも何故か吸い込まれる様な気持ちになりました。
ロケ地となったのは、横浜にあるホテルニューグランド。
映画を観てからしばらくして、このホテルへ宿泊したのを覚えています。


人も物事もきっとめぐり合い。
それらの大切さを知り、信じられる自分になりたい。
願わくは八千草薫さんがこの作品でも見せて下さる様な、死してもなお、あんなほほ笑みでもって見守ることの出来る様な人生を送りたい。


観て良かった。
RAY

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