不在

鏡の不在のレビュー・感想・評価

(1974年製作の映画)
4.6
冒頭の吃音の催眠療法は、まるでタルコフスキーの映画作家宣言のようだ。
タルコフスキーの父アルセーニーは、彼が幼い頃に家を出て行ってしまった。
詩人でもあった父を尊敬していたタルコフスキーは、離婚の原因が母にあると非難し、それによる不仲が罪悪感と共に描写されている。
更にタルコフスキーは意識下で母親とその時の妻を同一視している。
だからこそ彼らは後に離婚してしまう。
つまり自身の父親と同じ轍を踏むのだ。
恐らくはそれらの過ちを振り返ることで、母は母として、妻は妻として認める事が出来たのだろう。
これを観た2人が彼を許したと信じたい。

この映画は、インナースペースから始まり、人類の救済というアウタースペースへと、作品を通して彼が向ける目線が広がっていくまでのまさに中間点のような作品といえる。
ここで自分の気持ちに決着をつけ、より深い精神の探究へと踏み出すのだ。
不在

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