シズヲ

やくざ坊主のシズヲのレビュー・感想・評価

やくざ坊主(1967年製作の映画)
3.4
戒律など知ったこっちゃねえ!煩悩に塗れた破戒僧が金を貪り、女を抱き、ヤクザ共をぶちのめす!題名に加えて勝新主演ということで内容的に何となく予想できそうだが、蓋を開けてみれば概ね予想通りだった。本作の勝新はビジュアル的に座頭市とあんまり変わらないし、演技のテンションもドスを効かせてる時の市さんとそこまで大差は無い。それでも勝新が持つ野性的な魅力はきっちりと発揮されているし、立ち回りでの大暴れっぷりも豪快(お約束的と言えばそれまでだけど)。

主人公であるやくざ坊主はガチのアウトローで、やっていることは殆ど悪党同士の縄張り争いに等しい。寺を覗き見部屋付きの連れ込み宿にして金を取るわ、本堂で賭場を開いて仕切るわ、借金から助けた少女を無理やり抱くわ、所業を振り返ってみるとやりたい放題で凄い。宿場荒らしの際に神棚をトンカチで粉砕する絵面はいっそ清々しい。任侠者と呼べるかも怪しい俗悪人だが、勝新の愛嬌とカリスマ性でかろうじて主人公としてのバランスを取っている……のかもしれない。『座頭市地獄旅』での市さんとの関係を連想させる役割の成田三樹夫もそうだけど、脇も含めて悪役の雰囲気はけっこう好き。敵も悪党だが坊主も悪党なので、マジでやくざの抗争めいている。冒頭の荒れ果てた寺院の撮影も含めて、画的にもどちらかと言えば仄暗く荒涼としているのが印象的。

エピソード的には何となくぶつ切り感が否めず、悪事の限りを尽くす割にはそこまで盛り上がらないのが惜しい。主人公の悪党ぶりに関しても良くも悪くも勝新のキャラクター性で成り立っているというか、『不知火検校』辺りの強烈な泥臭さに比べると予想の範疇で物足りない。如何にもプログラムピクチャー的な内容だけど、勝新の活き活きとした下衆なアウトローぶりは楽しめる作品。座頭市はかつて助五郎親分に「やくざってのは御法度の裏街道を行く渡世人、天下の嫌われもんだ!なのにてめえは大手を振って歩いていやがる!」とブチ切れたが、やくざ坊主も割と大手を振って歩いているので味わい深い。
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