アーリー

ほしのこえのアーリーのレビュー・感想・評価

ほしのこえ(2002年製作の映画)
4.2
2023.5.2

短編アニメーションやけど、前作「彼女と彼女の猫」が5分ほどやったのに対し、今作は25分。SFと少年少女の恋という、新海誠っぽさが充分に堪能できる作品。

ガンダムのようなモビルスーツに乗る女の子と、地球に住む男の子のお話。登場人物はこの2人だけ。その2人の醸し出す雰囲気がとても暗くて悲しくて下向き。ずっと切ない。ガンダムでボーイミーツガールをやってもこんな雰囲気は出せへんやろうな。結構異色な組み合わせやけど、それが今でも新しくて面白い。

恋愛面に関して、多分お互い両想いなのがわかってるんやけど、あと一歩が踏み出せない状態が描かれる。結構仲良くて友達のような雰囲気を壊すのが怖いんやろうな。同じ高校に行こうとしてたけど、女の子が国連にスカウトされて宇宙に上がってしまう。強制やったんかな。女の子はそれもあって好きだって言えへんかったんやろうな。メールでやり取りは続けるけど、彼女が地球を離れるたび、メールの受信が遅れていく。国外にいる人とも結構離れてるなと思うけど、地球と宇宙で考えるともっと離れてるように感じるんかな。地球にいないっていうのが現代では全然想像できない。それをメールの届く速度で表現する。メールの着信が遅れれば遅れるほど、物理的な距離以上に心の距離も離れてるように感じる。
「わたしたちは、宇宙と地上にひきさかれる、恋人みたいだね」
凄いポエムなんやけど、めちゃくちゃ響くものがある。まだお互い気持ちを伝えてないから、恋人でもないし。2人の関係に一歩踏み込んだ一文。なかなか切ない。

SF面。モビルスーツがかっこいい。ガンダムで例えるならダブルオーで出てくるようなデザイン。シャープでソリッドという表現が似合う。戦闘描写に凄い力入ってて、普通にロボットアニメ。2人の切なくて繊細なパートと違って迫力のある戦闘。エヴァみたいに血が噴き出る。その辺のギャップが面白い。タルシアンの設定とかすごい気になる。8光年先にワープするとかもシンプルにワクワクするし。結局女の子は地球も戻れたんかな。帰りのワープが見つかってない時点で無理な気もする。それをわかってても行かないと行けない理由あったんかな。続編を作るなら男の方が会いに行くストーリーになりそう。

絵の感じはまだまだ荒いけど、空の描写とか光の表現とかはこの時からもう力入れてるのがわかる。あとBGMとの連動。青春、恋、青空、音楽。新海誠作品を構成する重要な部分がもう既にあって楽しめる。

この時から既に面白い。ポエムが苦手な人には合わんのかも。これを下地に弾けるような爽やかさと爽快感を持たせたのが「君の名は」やとしたら、そら売れるわって思う。ロボットものをもう一回作ってくれたらと思わせるような描写。短い時間でもちゃんと満足出来るいい作品やった。
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