福福吉吉

アビスの福福吉吉のレビュー・感想・評価

アビス(1989年製作の映画)
3.5
◆あらすじ◆
アメリカの原子力潜水艦「モンタナ」が突然沈没したため、政府は沈没した付近にある民間の海底基地「ディープコア」に海軍特殊部隊を送り、原因究明を図ろうとする。ディープコアの作業員たちはモンタナの残骸にたどり着き、生存者がいないことを確かめる。そんな中、ハリケーンの襲来によりディープコアと海上を結ぶクレーンが崩壊し、ディープコアは海底に取り残されてしまう。

◆感想◆
沈没した原子力潜水艦の原因究明のために海底基地にいた作業員や海軍特殊部隊が事故により半壊する基地の中で、絶体絶命の窮地に立たされながら生き延びようとする姿を描いており、海底の重苦しい雰囲気、海軍特殊部隊の暴走などで緊迫感の中、必死に踏ん張る基地の作業員たちの奮闘ぶりが熱い作品となっています。

海底基地「ディープコア」の作業員たちは民間の労働者であり、潜水艦の調査も会社の命令によるもので、仕方なく海軍に協力しています。リーダーのバージル(エド・ハリス)は仲間の信頼が厚く、状況判断に長ける人物として描かれており、本作の主人公として感情移入しやすいキャラクターでした。しかし、海軍の特殊部隊とともに妻で基地の設計者のリンジー(メアリー・エリザベス・マストラントニオ)が乗り込んできて、困った表情をしており、2人の関係が上手く行っていないことが瞬時にわかる好演でした。リンジーは男勝りで基地を我が子のごとく大事にしており、海軍に協力することになって怒りを隠しません。仕事優先な性格がよくわかる姿でした。

一方、政府から派遣された海軍特殊部隊のコフィ大尉(マイケル・ビーン)はかなり高圧的で基地の作業員たちに服従を強要する人物であり、とても憎らしかったです。コフィは秘密裏に行う任務の重責と潜水に伴う症状が重なって精神的におかしくなっていきます。彼の存在がディープコアの面々に危機的状況をもたらし、その点で敵としてよくできたキャラクターだったと思います。

本作では最初の原子力潜水艦「モンタナ」が正体不明の光と接触したことが描かれており、その光がストーリーに最終的に結末へと結びつくのですが、ストーリー途中でその光の正体が分かっても、ディープコア内の人間関係に影響をもたらさないので、少し肩透かしを食らいました。あくまで海底での絶体絶命の危機の中で、作業員たちが必死に生きる姿を描くことが主眼であり、謎の光は副次的な対象に過ぎませんでした。

海底基地の映像は良くできていて、作業性重視の骨太な基地内部のディティールがとてもリアルに感じました。基地が損傷を受けてあらゆる箇所で水が噴き出し、機器が発火する様子はとても緊張感があって良かったです。

海底という未知の世界で人々が懸命に生きようとする姿がしっかり伝わってくる作品となっていてなかなか面白かったと思います。ラストはかなり豪快でしたが、この後どうなったのか知りたかったです。

鑑賞日:2024年4月6日
鑑賞方法:Amazon Prime Video
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