けんたろう

アギーレ/神の怒りのけんたろうのレビュー・感想・評価

アギーレ/神の怒り(1972年製作の映画)
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布教と建国の滑稽なるおはなし。


迚も正気とは思へない。

屹立する山。山道に横たはる激流。アマゾンの奥地でのとんでもねえロケエシヨンに、只々圧倒せらるゝばかり。

其んな過酷なる中での旅も亦た、異常なこと此の上ない。黄金郷を目指す一行の、果ての無い川下り。一個の筏の上で狂ほしく絡みあふ慾望と絶望。自然どころか原住民からさへも及ぼさるゝ、生命の危険。遂に迎ふる肉体と精神の限界。其れでもなほ同行する女と、依然として座す権威。もうはや滑稽である。
はてな、此の目に見ゆるアレは、幻かしら。否、アレは現実である。錯乱錯乱錯乱錯乱衰弱衰弱衰弱衰弱。

然うして野望に取り憑かれし男の、筏にひとり佇みし男の、──何んたる狂気!
嗚呼、狂うてゐる。迚も正気とは思へない。