きゅうげん

アギーレ/神の怒りのきゅうげんのレビュー・感想・評価

アギーレ/神の怒り(1972年製作の映画)
3.7
『食人族』が観られなかったのでかわりに『アギーレ/神の怒り』。
メルギブの傑作『アポカリプト』後の新世界を舞台に、黄金郷エル・ドラドを探し求める野心家ロペ・デ・アギーレの狂気的旅路を描く暗黒寓話です。

まさしく「神の怒り」と渾名されるアギーレは、父と子と精霊や自然までもを愚弄し嘲笑し、狂気へ潰走してゆきます。そして神秘的で虚無的なラストを迎えるのですが、ヘルツォークによると当初は、アギーレが大西洋へイカダを漕ぎだすも波にはばまれ進めない、というものだったらしいです。そちらも非常に象徴的ですね。

実際のエル・ドラド探索は、アギーレをはじめ退役軍人が征服事業において騒動を起こしかねないことからの、いわば左遷の側面があったらしいとか。コンキスタドールのなかでも、彼はもともと鼻つまみ者だったのでしょうか。
それにしてもアギーレを狂気的に演じあげたクラウス・キンスキーと監督ヴェルナー・ヘルツォークは、やっぱりまさに黄金コンビですね。
しかしこのコンビ、並んで立ってるだけでスゴそう……。
また朝靄のなか切りたった崖を下る冒頭や、濁流を滑るイカダの様子に樹上にぶら下がる帆船など、撮ったことそのものに衝撃をうける場面ばかり。映画にも革命のおこった70'sでは、こうした体当たりロケ撮影による映画製作そのものがもつ意義も一入だったのでしょう。