ひこくろ

少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録のひこくろのレビュー・感想・評価

4.6
(テレビシリーズは見ました)

人間の想像力ってこんなところまでたどり着くんだ、と圧倒されるアニメ映画だった。

登場人物と基本的構造はテレビと同じ。
なのに、性格や設定、関係性などがまるで異なるところにまず驚く。
こういうことをやる映画って、テレビシリーズの劇場版ではたまに見かける。
が、大抵は下手な二次創作のようになりがちだ。
それが、この映画ではまったくそう感じさせない。

こういう「少女革命ウテナ」もあり得ると思わされるし、逆にこれぞウテナだとも思わされる。
総集編でもなければ、ダイジェストでもない。
完全に別の話というわけでもない。
ファンに向けた内容にも見えるし、ファンを無視したものにも見える。
すごく不思議で挑戦的な試みだと思った。

また、映像が息を呑むほどに素晴らしい。
テレビでもそのセンスは卓越していたが、そこに映画ならではの品質が加わってすごいことになっている。
あまりにも繊細で細かい描写。どこまでも描き込まれた手描きの画。
まだ、CGがほとんど普及していない時代の作品とは、ちょっと信じられない。
いま観ても美しいし、格好いいし、迫力がある。

物語にしてもアニメーションとしても、一本の映画として非常に完成度が高い。
なので、テレビシリーズを見ていない人でも、関係なく楽しめると思う。
と同時に、テレビを見ていたからこそ感じられる感動もある。
それがまた、補助的な意味でも、小ネタ的な意味でもなく(そういうのも少しだけあるが)、なんというか、テレビの物語とアニメそのものがこの映画の全体的な伏線になっているという感じなのが衝撃だった。

いろいろな面で、すごいものを観てしまった、と心から思える映画だった。
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