佐藤克巳

けものの眠りの佐藤克巳のレビュー・感想・評価

けものの眠り(1960年製作の映画)
4.0
正直者が馬鹿を見る事に定年退職して気付いた芦田伸介の悲叫が、体内に潜むけものの眠りを覚まし、自ら新興宗教の密貿易会社経理部長になり犯罪に手を染めた。その犯罪組織に追及の手を緩めない敏腕記者長門裕之、芦田の娘で恋人吉行和子、横浜支社同僚の小沢昭一が、教祖下元勉、社長信欣三、部下草薙幸二郎、上野山功一を追い詰めていくサスペンスを、鈴木清順監督がドキュメントタッチで緊張感溢れる傑作とした。バンプ役楠侑子の妖艶さと吉行の愛くるしい純情娘の対比が鮮やかで素晴らしく、何よりも記者魂炸裂の長門とけものとなった芦田の演技力には舌を巻いた。
佐藤克巳

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