きゃんちょめ

呪怨のきゃんちょめのレビュー・感想・評価

呪怨(1999年製作の映画)
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大変おもしろかった。

できればウサギ小屋のシーンも映画内で見せてほしかった。実は、ウサギ小屋で吉田ヒサヨと村上柑菜が襲われるシーンは、『学校の怪談R』という映画の「片隅」という短編のほうに収録されており、そちらも見たのだが、非常に怖かった。柑菜の下顎が伽倻子にもがれるのである。

佐伯伽椰子の夫で乏精子症の佐伯剛雄が、佐伯俊雄が自分の血のつながった息子であるわけがないと勘違いして佐伯俊雄を虐待し、さらには佐伯伽椰子が密かに片思いしていた小林俊介の、臨月の妻を殺害し、子どもを子宮から取り出してしまうという描写があった。そして電話ボックスから電話をかけてくるのである。

佐伯剛雄は自分が他人の子どもを育てさせられたと勘違いしていたということなのだろう。佐伯剛雄は、この世界に残っていくと思っていた自分との血のつながりが失われたとわかったときの悲しみを小林俊介にも味あわせたかったのかもしれない。「ひどく苦しんだものは、苦しまなくてよいはずの他人の幸せを見ていられず、苦しめてしまう」というのは、映画冒頭に掲げられた「呪怨」という言葉に込められた意味そのものだと思う。憎しみは連鎖するのだ。

佐伯剛雄のこの殺人は、1988年3月18日に起きた、「名古屋妊婦切り裂き殺人事件」に着想を得ているようだ。

幽霊など実在しなかったとしても、憎しみの連鎖のほうは実在すると私は思っているし、この映画には後者がちゃんと描かれていて、怖かった。
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