三樹夫

スケバン刑事の三樹夫のレビュー・感想・評価

スケバン刑事(1987年製作の映画)
3.0
『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』のその後の話。ストーリーは、孤島に浮かぶ不良更生のための私立の学校では実はクーデターを起こすための兵器にしようと不良を洗脳しており、地獄城と呼ばれるトンデモ学校に麻宮サキたちが潜入し生徒たちを解放するというもの。3代目麻宮サキのC-Girl浅香唯も戦いに加わり、最後は大西結花と中村由真も出てきて、次作『スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇』への橋渡しが行われる。

アイドル映画でよくあるのは、角川映画だと訳の分からん物語の中にアイドルぶち込んで、訳が分からないながらも必死に頑張っている様が愛おしくなったり、アルジェントだとジェニファー・コネリーを蟲プールにぶち込んだりしてサディズム的な感覚を刺激している。そして『スケバン刑事』シリーズを作るにあたり東映はどうしたかというと、演技もアクションも出来ないアイドルをぶち込んで、必死にアクション頑張っている様が愛おしくなってくるという作り方をしている。ただ『仮面ライダー』やメタルヒーロー的世界の中にアイドルをぶち込むという、作り方自体は従来のやり方を踏襲している。
斉藤由貴の『スケバン刑事』、『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』は全話視聴済みだが、作り方自体は従来の東映のやり方を踏襲というものの、どう作っていいか結構試行錯誤してる印象を持った。『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』では『ウォリアーズ』や『第三の男』まんまの回があったり、麻宮サキが応援団に入るという全く面白くない回があったりした。なにより一番大変だったろうなと思うのが、斉藤由貴と南野陽子共に全くアクションが出来ないという点。南野陽子は腕立てが一回もできないぐらい運動音痴、斉藤由貴も走っているシーンの走り方が典型的な運動が出来ない女の子の走り方で、JACなどを登用してアクションを作ってきた東映も頭抱えただろうなと思う。といっても南野陽子のアクションのスタント吹き替え時には明らかにガタイが男のものになるなど、わりかし吹っ切って作ってもいるが。
前作では斉藤由貴一人で戦っていたのが、『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』はビー玉のお京と雪乃の二人が脇にいて三人体制になったことでGLの要素も入っていた。ビー玉のお京と雪乃の二人とも麻宮サキが好きなのだが、この三人の関係を一番よく表しているのがEDの歩道橋を歩いているシーンで、雪乃は麻宮サキの横に立って番傘をさし一緒に歩くが、ビー玉のお京は少し離れた後ろを歩いている。雪乃はストレートに麻宮サキへの好意を示すが、ビー玉のお京はツンデレというか麻宮サキが好きなのに気持ちを上手く表現できないという、GL三角関係になっていた。ちなみに麻宮サキは二人をヤキモキさせるモテ女な感じ。やはり作り手としては自分の気持ちを上手く表現できない不器用なビー玉のお京に感情移入するのだろうか、ドラマ版ではビー玉のお京はかなり優遇されている。ビー玉のお京はそもそもキャラ的に藤純子が任侠映画でやっていたキャラに近く、実際に任侠映画のように口上を述べるシーンがあったりするし、やりなれているキャラで使いやすいというのがあったのだろう。ただGL三角関係のドラマであったがメインの三人の仲はとんでもなく悪かったと言われている。一方で『スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇』の三人は仲が良く、たまに三人で集まってライブなども行っている。

ドラマの後日談としてこの映画だが、完全に南野陽子一人だけにフォーカスした作りになっている。そのためビー玉のお京と雪乃の影が薄い。南野陽子のアイドル映画としてどう作っているかというと、ひたすら南野陽子を痛めつけるというどうかしているコンセプト。電気ショック拷問を受けたり伊武雅刀に痛めつけられたりなど、それを必死に頑張る南野陽子が愛おしくなるという作りになっている。どう考えても間違っている変な土佐弁を健気に話す南野陽子もそうだし、劇中で西脇さん特製の、威力は凄いが反動で再起不能になるぐらいのダメージを負う諸刃の剣ヨーヨーを連発しボロボロになりながら戦う様も、映画内の役柄においても現実においても痛めつけられながらも健気に頑張る南野陽子という二重の仕掛けになっている。
しかし南野陽子の一人舞台かと思われたが、伊武雅刀の異常な熱演により、伊武雅刀のアイドル映画という側面もある。不良を殺人兵器にしてクーデターを企てる極右という狂った役を熱演しているだけでも最高なのに、最終的には完全に『ターミネーター』からパクったろというメタル伊武雅刀が爆誕して、伊武雅刀のアイドル性が存分に溢れている。

相変わらずメインの女子高生に誰一人として演技もアクションも出来る人がいないかと思われたが、浅香唯が何気に運動神経良かった。幼少期は兄の影響で男子と遊ぶことが多くやんちゃだったのが影響しているのだそう。役柄もバカというキャラで、手甲と陣鉢がカッコいい。っていうかこれ東映が延々やって来た時代劇のキャラね。
脇を固める大人は伊武雅刀、蟹江敬三、長門裕之と演技がしっかり人でがっちり固められている。西脇さんこと蟹江敬三は麻宮サキが唯一心を許せる男性みたいな役だが、ドラマだと恋愛感情?ともとれる危うい関係になっている。前作では同ポジを中康次が演じていて、斉藤由貴は毎回目を見開いて「じん!」と言う。一方で南野陽子は舌足らずな感じで「西脇さん」と言うのが特徴的。中康次は女子高生受けするのがまだ分かるけど、ただ西脇さんを演じているは蟹江敬三なわけで、蟹江敬三が女子高生受けするのはずっと違和感あったな。
アイドル映画は面白い面白くないというところとはまた別のような気がして、感覚的には好きな女の子がやってる文化祭の劇を観ているような気持ちになる。好きな女の子がやってる文化祭の劇をここが駄目だの良かっただのと批評しないし。
実はこのシリーズの後継者というか、このシリーズをサンプリングしている者の中に冨樫義博がいる。『幽☆遊☆白書』と『HUNTER×HUNTER』にはヨーヨー使いが出てくるが、元ネタは『スケバン刑事』だろう。
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