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鳥人のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

鳥人(1940年製作の映画)
3.8
「コンドル」で戦闘機ではない飛行機に魅了され、見つけたこれは、あの「空飛ぶ幸吉」ではないですか。夏休みの子供向け舞台劇で夢中になった作品。何十年ぶりかに幸吉さんに再会し、子どもの時にワクワクしたように、高揚感がありました。

あらかん(嵐寛寿郎)演じる浮田幸吉が信念あるイノベーターとして、飛行機開発に全財産を擲ち、人生をかけます。

史実とはずいぶん違うようですが、フィクションとして観れば、1940年の作品なのに現代に通じるワクワクがあり、リメイクして欲しくなりました。イノベーションを支える技術開発やビジョンについて描いていて、とても感動しました。人間関係のエピソードも温かいヒューマンドラマでした。

人類の歴史を変えようと夢を抱き、技術開発に人生かけてきた幸吉。その理念に共感し幸吉に惚れ込み集まってくる人々、世論の反対や批判と風評、産業スパイ、多大な犠牲、まるで現代劇みたいでした。困難を乗り越え、幸吉が飛ぶ姿は気持ちよかったです。

封建時代には、「機械」を作ることが禁止されていて、そのために技術開発が大幅に遅れた日本。掟を破ってまで叶えたかった空飛ぶ機械の開発。

おもしろいことに岡山の家老の息子に対して、もともとは有能な表具師の幸吉や職人たちが対等に話し堂々としているところ。時代劇でみる武士にへりくだった庶民ではないところが意外でした。

実際は、岡山の藩主から飛行機実験の騒動を起こしたことで、幸吉は所払いとなり、静岡に転居し、そこで優秀な歯科技士となっています。岡山の元藩主の子孫が粋な計らいをし、1997年、所払いを取り下げています。

とてもおもしろかったので、ラスト30秒の1940年の時代的な追記は観なかったことにしました。

画像は眼鏡が曇ったみたいな粗さですが、音声がクリアで古い邦画にしては珍しく会話がしっかり聞こえます。雑音はありますが。
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