ダイアー教授

ホステルのダイアー教授のレビュー・感想・評価

ホステル(2005年製作の映画)
3.9
題:生と死、光と闇

製作:2012年、アメリカ&チェコ
原題:Hostel
監督:イーライ・ロス

<あらすじ>
アメリカ人が旅先で酷い目に遭う「アメリカ人受難」の話。

惨劇の舞台はスロバキアのブラチスラヴァ。拷問施設はチェコにある建物らしい。
ストリートキッズたちは本物をキャスティングしたとのこと。

賛否ある映画であるが私はとても好きな映画であり、語るとキリがない。
3つにまとめてレビューします。

1. 組織とタトゥー
Elite Hunting Club…「上級国民の人間狩りクラブ」とでも云うべきか?
会員は倒錯した性癖の持ち主で『ソドム百二十日』の登場人物を思わるサディスト。
組織のロゴは猟犬(ポインター?)。関係者はタトゥーを入れている。
ロス作品の『アフターショック』『グリーン・インフェルノ』同様に本作もタトゥーが重要な要素となっている。

2.アメリカイズム
主人公のアメリカ人青年パクストンは、少年時分に少女を救えなかったことを後悔し、それがトラウマとなっている。
勇気を振り絞ってカナの叫び声が聞こえる部屋へ向かうことを決意するが、それはこのトラウマがあるからだ。

パクストンはランボーでもジョン・マクレーンでもセガールでもない。
普通のアメリカ人だ。
彼をカナの部屋に向かわせたのはアメリカ人男性の持つ人助け精神あるいは英雄精神ではないだろうか?
アメリカ人の性格を揶揄するジョークで「ここで飛び込めばあなたはヒーローになれます」というのがあるが、私はパクストンの行動にアメリカイズムを感じた。

3.テーマ
「現代人は、食べ物が生物の命であり、それに感謝することを忘れている。」
と、寝台列車で“サラダ手づかみオヤジ”が持論を述べる。

旅行先で飯だ、酒だ、セックスだ、ドラッグだと快楽に耽るばかり。
みんな生の悦びばかりに触れて、生の闇に触れていない。
観光で観られるのは光ばかりで、闇が観られることはない。

異国の女性の美しさを見て、醜さを見ようとしない。
夜はとても魅力的だった2人も、昼のノーメイク状態はブサイクである。しかし、それが彼女たちの本当の姿なのだ。

光あるところには闇があり、生と死は隣り合わせなのである。
生の光ばかり見て闇と死から目をそらしている、現代人に対する皮肉が『ホステル』には込められていると思った。