『からっ風野郎』
Afraid to Die
1960
大映
「アカもヤクザも臭い飯を食ってくれば箔がつくのは変わりがあるめぇ?第一国のお偉方も戦犯だなんだとムショで箔をつけてきた連中ばかりですぜ」
「あんたみたいに腕も度胸もない人間にはヤクザはむかねぇよ」
大映社長永田雅一が三島由紀夫に映画出演を持ちかけていくつかの企画が検討されて菊島隆三が書いたストーリーが採用された。映画に出演するにあたって「インテリ役は困る。チンピラ役が良い」と三島由紀夫は希望したらしい。
三島由紀夫が演じたのは腕も度胸もない不甲斐ない二代目ヤクザ。
・ライバルの相良組の組長暗殺に失敗して服役
・相良組の襲撃を恐れて警察に守られてこっそり出所
・出所後、情婦からネックレスを巻き上げて縁を切る
・叔父貴(志村喬)からハッパをかけられて相良暗殺を試みるが失敗
・相良の小学生の娘を誘拐して相良を脅迫
・若尾文子をレイプする。妊娠した彼女につわりに効く薬だと偽って堕胎薬を飲ませる
小学生を誘拐。死亡者が出ている未認可薬物で一儲け企む。嘘をついて堕胎させようとする。
『悪名』、『兵隊やくざ』『若親分』シリーズなどの悪いヤツだけど卑怯な真似をしないヤクザとは一味違う不甲斐ない現代ヤクザを三島由紀夫が演じている。
三島由紀夫の演技は箸にも棒にもかからないが映画はつまらなくはない。モラハラセクハラ、児童誘拐、全く弁護の余地がない。よく見るとこの主人公が強くでるのは女子供相手の時だけで強い男達からはコソコソ逃げ回ってばかりいる。
ヤクザなんてこんな連中だと容赦なく描いている点は評価できる。
・駅の待合室で大親分の仲介の元、手打ちをする場面はなかなか緊張感があった。
・ラストのエスカレーターの場面が印象的。自分が行きたい方向に行くことができず運ばれて行く姿が哀れ。増村保造の工夫が光っている。