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マルティナは海のemilyのレビュー・感想・評価

マルティナは海(2001年製作の映画)
3.0
 地中海に面した港町に教師として赴任したウリセスは下宿先のカフェの娘マルティナに一目ぼれする。二人はたちまち恋に落ち結婚し、子供が出来る。しかし幸せな反面愛が生活に変わりウリセスは退屈を感じ始め、二人の間に気づかぬ内にひびが入り始める。そんなある日大嵐に見舞われ、船で釣りに出かけたままウリセスは行方不明に。マルティナは富豪で昔から言い寄られてた男と再婚するが・・・

 太陽が燦々と降り注ぐ美しい港町、オレンジを吸って食べるマルティナ、カフェのパエリア、たちまち激しく愛し合い、ウリセスの読むギリシャ神話が愛の物語に寄り添う。ウリセスの語りから広がる幻想的な世界にマルティナの肉体美が海の青に溶けていく。物語は目まぐるしいスピードで展開していき、一気に二人の溝に追い打ちをかける出来事が起こる。ウリセスの溜息の原因は愛というギリシャ神話と交差させて唱えていた幻想的な物が、一気に形を持ちリアルになり、責任という物が大きくのしかかってきたのだ。愛が生活になると、そこには慣れが生じる。すると人はそこから不満を感じるようになるのだろう。しかし失ってはじめてその存在の大きさに気が付く。もちろん失ってからでは遅いのだが、その日々の些細な出来事の一つ一つが幸せであったことをやっと男は気が付くのだ。

 愛かお金か。男と女の埋まらない価値観、それでも貫かれている愛にすがりつく。とっくにマルティナはお金ではなく愛を選んでいたのだ。そうしてその愛は全く変わっていなかったことに気が付く。まるで激しく神話になって消えていくように、海の伝説のように物語は悲劇をもって幕を閉じる。それは悲劇ではなく、二人にとっては幸せな結末だったのかもしれない。こうやって二人の愛は永遠となり、海の中で生き続けるのだから・・
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