いろどり

風の絨毯のいろどりのレビュー・感想・評価

風の絨毯(2002年製作の映画)
3.8
日本のお祭りの山車に飾る幕にペルシャ絨毯がこんなに合うとは、感動ものだった。そのペルシャ絨毯をイランに取りに行くお話なので、ほとんどはイランロケ。異国情緒あふれるイランは、食事も音楽も踊りもすべてがエキゾチック。

ペルシャ絨毯はすべてが人の手によって作られるから何カ月もかかる。一本一本糸を染色し、一度に何人も横に並んで編んでいく。
乾かし方も、太陽と風でないと色が活きない。火や人口の風では出せない色合いを大事にする。だからこそペルシャ絨毯は繊細。
子供たちが、染色したたくさんの毛糸を持って走り回りながら乾かしているシーンでは、イランの軽快な音楽も手伝い、自然と笑顔になった。
伝統文化に誇りを持ち、大事にしているイラン人と日本人には、国民性の違いはあれどどこか分かり合えるものがあるように思う。

少年が働かなければならないリアルな現実もしっかり描かれる。イランの少年ルーズベと日本の少女さくらの淡い恋物語が織り込まれているのも良かった。「好き」と伝えたくてアイラブユーの日本語を教えてもらおうとしたけど恥ずかしくて、「りんごが好き」という日本語を聞いてしまう。「僕はりんごが食べたい」と教えられ、さくらに「僕はあなたが食べたい」と言ってしまうところが可愛かった。

ラスト、日本に渡ったペルシャ絨毯の中に、ルーズベとさくらが確かに分かり合えた印の結び目がクローズアップされるシーンがとても良い。私の心に温かい風が吹いた。

小作品ながら美しく、イランの文化を楽しめる良い映画だった。
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