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E.T.のSQURのレビュー・感想・評価

E.T.(1982年製作の映画)
4.0
誰の胸にもE.T.がいて欲しい。
孤独な男の子にも、大人になろうとしているお兄ちゃんにも、純粋な妹にも、その場に居合わせただけの友人にも、夫婦関係に行き詰まったお母さんにも、ずっと夢を抱き続けていた科学者にも。誰の胸にもE.T.が居続けてほしいと思う。

E.T.は奇跡の象徴だ。父を失い、変えようのない現実に打ちのめされたエリオットには奇跡が必要だった。どうしようもない現実に対する超現実的な脱出口としてE.T.の存在がある。エリオットは孤独で、その空洞を埋めてくれる誰かの存在を求める。エリオットが求めたからE.T.はエリオットのところへやってくる。でもE.T.は本当はエリオットに求められたから地球に来たわけではないから、自分の星に帰らないといけない。E.T.とエリオットの出会いは模倣で始まって模倣で終わる。親子の関係も最初は模倣で始まる。だからE.T.はいわゆる親的なものではない。親以前の関係、エリオットが求めていたのは父性ではなく、そう言った模倣で繋がり合う心と心の関係なのだ。それは彼が父を失うと同時に失ったものなのだ。そして、自転車の前かごに彼を乗せて月夜駆けるあの有名なシーンはは現実を彼の願いが超克した瞬間なのだ。人生において数回あるかどうかの本当のカタルシスなんだ。

だから、誰の胸にもE.T.がいて欲しい。
孤独な男の子にも、大人になろうとしているお兄ちゃんにも、純粋な妹にも、その場に居合わせただけの友人にも、夫婦関係に行き詰まったお母さんにも、ずっと夢を抱き続けていた科学者にも。誰の胸にもE.T.が居続けてほしいと思う。
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