春とヒコーキ土岡哲朗

E.T.の春とヒコーキ土岡哲朗のレビュー・感想・評価

E.T.(1982年製作の映画)
-
宇宙人が出てくるけど、これは少年の日常だよ。

宇宙人と共に過ごした経験は実際にはないけど、でも、小さい頃はそのくらいの想像を常にして過ごしていたから、この映画のワクワク感は、みんなにとって現実。
カエルの解剖の授業中に、エリオットが女の子にキスをするシーン。ロマンチックに描くのではなく、逃げていくカエルが教室中に飛び跳ねている、飾らないどころか、むしろ汚しているような演出。だけど、この疾風怒濤って感じが、過ぎていく少年時代の慌ただしさ。

物語の中にも、エリオットのようにE.T.の味方だと名乗る大人が登場する。ちゃんとこういう大人がいてくれる限り、夢は生き続ける。スピルバーグ然り。
エリオットはまだ素直な年頃だが、兄の友人たちは反抗的な年頃。でも、後半で兄の友人たちに説明抜きで協力を頼むと、好奇心でついてきてくれて、E.T.を見せたら何も言わずに感動し、共に来てくれる。普段冷めて暮らしている人さえも惹きつけられる驚きと感動。それさえあれば、夢に目を向けさせることはできる。人間はいつまでも、小さなころに走った記憶を思い出せる。