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E.T.のTPのレビュー・感想・評価

E.T.(1982年製作の映画)
4.8
★1989年に続き2回目の鑑賞★

 35年前に鑑賞した時の評価は5。今回観なおすにあたって、子供・ファミリー向けの映画だと思っていたので、正直、あまり期待していなかったのだが、本作は万人に受け入れられるエンタテイメント映画の傑作と再認識した。

 主人公家族の父親が他の女と家を出ていったこと(メインストーリーと全く関係ない設定であり、ファミリー映画なら本来は父親も出てくるのが普通)、E.T.を捕まえに来る大人たちが全く顔を見せないこと、物珍しいE.T.の登場で本来周辺がやかましくなるはずがその気配を見せないといった設定は、今回鑑賞後初めて知った、スピルバーグの自叙伝から端を発したストーリーがベースとなっており、その設定こそが本作を全く無駄のない愛情溢れる一遍にしていると思われる。

 ストーリーは、地球に一人残されてしまったE.T.とそれを助けることのみに腐心する三兄弟の絆、そして最後の別れと、いたってシンプルな構成。
 平凡なファミリー映画なら間違いなく挿入すると思われる、異星人と遭遇するときの大きな驚き、家族や知人内の政府に引き渡そうという試み、異星人を捕まえに来る政府側との戦いといった、言ってみれば、現実的には極めてあり得る展開が、本作ではほとんど描かれない。
 このため、すべての焦点がE.T.と彼を取り巻く三兄弟の行動に集まっていて、その目的も1点に向かっているため、2時間という時間が、極めてシンプルなストーリーしかないのに、集中して観られるため非常に早く感じられる。

 そういう手腕こそが、スピルバーグがスピルバーグたる所以。
 今回観たのは20周年特別版なのだが、それでも現代と比べればCGはちゃっちいし、E.T.を乗せてマウンテンバイクで疾走するエリオットは明らかにヘンリー・トーマスではないなど、欠点はあるにせよ、どう見たって薄気味悪い風貌のE.T.に段々と愛嬌を感じてくるという映画的マジック、三兄弟が力を合わせてE.T.を救う時のカタルシスなど、本作の良い部分が偶発的な科学的反応によって昇華して際立つエンタテイメント性は、「バック・トゥー・ザ・フューチャー」と並び評されてしかるべき高みに至っている。
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