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誘惑のMOCOのレビュー・感想・評価

誘惑(1984年製作の映画)
3.0
「怪我をしてるの?
あなたね、あなたが銃を?!
スコット・・・」


 デイビス夫婦は結婚6年の記念に予約したレストランで食事をするのですがレストランの駐車場係は二人組の泥棒の片割れで、客がレストランに滞在中に相棒が客の家に侵入し強盗を働くのです。

 泥棒達はデイビス夫妻の家を標的にします。実行犯のスコットは巧みにガラスを破り立ち入ると侵入痕を残し、相棒の「今店を出た」の連絡で立ち去ります。

 捜査に訪れた刑事はデイビス夫婦に「プロの仕業で逮捕は難しい、保険金が補填されたころまた現れる事件が頻発している」と語ります。

 スコットはこの仕事(強盗)で、壁にあった夫人のパネル写真も盗みます。スコットは写真の彼女に一目惚れしたのです。
 さらに盗品の中には知らずに持ち出した彼女の悩ましい日記が・・・。

 日記を読んだスコットは仕事一辺倒の夫との結婚生活に不満のデイビス夫人に笑顔で巧みに近づきます。最初は偶然を装い紳士的に、事業家を装いビジネスパートナーになり、そして肉体関係に・・・

 夫は浮気を疑いはじめ問いただすのですが妻は聞き入れないのです「嫉妬しているの?ずっとほっておいて」
 彼女は気持ちが揺れはじめた時、何度もSOS信号を出していたのですが・・・。

 二人でいる時間が増えれば増えるほどスコットは過去も語れない学もない自分に苛立ちはじめ、夫人も過去を聞くと言葉遣いや態度が荒々しくなっていくスコットに不安を感じます。
 
 スコットは相棒と強盗に入った際に相棒が通報者を射殺したことに怒るのですが後の祭り、やがて現場から相棒の指紋が採取され相棒に「お前も同罪」と言われ夫人のオフィスを訪ね「急に街を出ることになった。一緒に行こう」と誘います。誘いを断られると苛立ち「今の結婚生活に不満のはずだ」とペラペラと日記の内容を話しはじめます。

 スコットの正体を知ったところに、割って入ってくれたのは駆けつけた夫でした。
 一方的に暴行を受ける夫を庇う彼女にスコットは身を引き出ていきます。

 その夜スコットは彼女の気持ちを知ろうと再び屋敷の二階のベッドルームに侵入し日記を盗み読みします。そこに相棒が現れます。相棒は警察が言った通り保険で補填されたデイビス夫妻の家を狙い街を出るつもりなのです。

「あの二人に手をださせない」スコットは揉み合いになり相棒にナイフで刺されてしまいます。

 夕食から帰宅した夫婦は二階に人の気配を感じます。夫人が警察に連絡している間に夫は犯行を終え銃を持った覆面の泥棒と鉢合わせになります。夫人は防犯の為に入手していた銃を向け泥棒は即死し、駆けつけた警察が検分をはじめます。

 ふとベッドルームに入った夫人は窓辺にスコットがいることに気が付きます「撃ったのはあなただったのね」・・・。


 35年も前レンタルビデオ店の店頭にジェフ・ゴールドブラムの「眠れぬ夜のために」とこの映画がセットになったレンタル予告のポスターがありレンタル開始日に2本レンタルした思い出があります。何故その2本の映画にそんな経費をかけたのかはずっと謎です。

 誘惑の為に現れたスコットは颯爽としているのですが、化けの皮が剥がれないように振る舞い、パトカーのサイレンを気にする惨めな、情けない男に徐々になっていきます。
 しかし、ラスト彼女を守って無言で去っていくスコットは誘惑のために作り上げたスコットより何十倍も素敵な顔をしています。
 そんな演出の上手さと演技の上手さが光るスリラー映画です。ポップな音楽もいいのにレンタルされていないのは本当に惜しい。
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