荒野の狼

続 雷電の荒野の狼のレビュー・感想・評価

続 雷電(1959年製作の映画)
4.0
「続・雷電」は、「雷電」から直接話が繋がっているが、新しい登場人物が多く、より魅力的な内容。大田蜀山人役の沼田曜一は出演するだけで、強い個性をみせる演技である。ちなみに、蜀山人の賛のついた雷電の手形は現在でも見ることができるため、映画での蜀山人の登場には歴史的にも意味のあるところ。女優陣では池内淳子が登場。なお、雷電の妻となる女性の名前と本作の役名は同じであるので、恋の行方が気になる人は、雷電の妻の名前を知らないで本作を見るのがおススメ。
本作で雷電の最初のしこ名が「白根山」となっており、幕下で相撲をとった場面があるが、いずれも史実ではなく、記録に残る土俵成績は幕内のものしかなく、しこ名も当初のみ「雷電 為五郎」で、後に「雷電為衛門」となった。一方、松江藩のお抱え力士に雷電がなったのは史実で、現在も島根県には雷電ゆかりの地がある。
本作のハイライトは大関の小野川との対戦であるが、本作の決まり手と史実は異なる。雷電と小野川の初対決は大物言いになった勝負で、ここで映画の見せ場を勝負審判も絡ませて作れたはずなのに、決まり手が明瞭な投げ技になってしまっているのは惜しい。とくに、本作では、審判役に元横綱の東富士、元大関の清水川が出演しているのだが、顔のアップになるのは一瞬であり(本作開始後1時間2分くらいから)、もったいない配役。他に元関脇の天竜(三郎)と綾川(双葉山にも勝利している)も出演していたはずであるが、審判役であったかどうかは確認ができなかった。ちなみに天竜も綾川も不遇の引退をしており、本作で共演しているのは奇遇か、製作者側のはからいかは不明。小野川役は、肉体派の佐伯秀男で、取り組み後に姫役の小畑絹子にからかわれるシーンでは、肩から上腕にかけての筋肉が素晴らしいが、取り組みのシーンには迫力が欠ける。なお、本作では、取り組みが決まる際に遠くからの撮影が多く、人物が小さくなっている。これは単に撮影のミスなのか、代役を使っているためか、はっきりしないが、おそらく取り組んでいるのは役者本人に見えるので前者であろう。相撲ファンが見る映画なので、取り組みの撮影には、もう少し工夫が欲しかったところ。
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